事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.3
ティーエスワン服用中の患者が目のかすみを訴えた?
- 悪性腫瘍
難易度:★★☆
- 疾患名:胃癌
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- 医薬品販売名:ティーエスワン配合カプセルT20
- 医薬品一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方>70歳代・男性、大学病院
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- ティーエスワン配合カプセルT20
- 6錠 1日 2回 朝夕食後 14日分
Subjective data:主観的情報
この薬を飲み始めて気持ち悪くなったりしないか心配だったけど、大丈夫そうだよ。目がかすむ感じもするけど、まぁ年のせいかな。
Objective data:客観的情報
悪心なし。眼症状の訴えあり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
目のかすむとの訴えは年齢のせいではなく、ティーエスワンの副作用である涙道閉塞の可能性も考えられる。他の眼症状の有無を確認し、主治医に相談するようすすめる。
Plan:計画
副作用の可能性があることを伝え、その他の眼症状を確認する。症状が続いたりひどくなったりする場合は、なるべく早く受診して主治医に伝えること。次回、眼症状の経過確認。
説明事例
「このお薬を飲み始めても、吐き気などはとくに起こらなかったのですね。それはよかったです。ただ、先ほどおっしゃった『目がかすむ』という症状ですが、お薬の副作用の可能性も考えられます。他に、涙が出やすかったり、目が充血したりすることはありませんか。気になる目の症状があるようでしたら、眼科検査や治療を行うことがありますので、なるべく早く先生にお伝えください。」
解答に必要な医薬品情報
ティーエスワン配合カプセル T 20 の添付文書より抜粋
Pmdaでの添付文書情報はこちら
※必ず、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
【使用上の注意】
4.副作用
(1)重大な副作用
15)涙道閉塞:涙道閉塞(頻度不明)があらわれ、外科的処置に至った例が報告されている。流涙等の症状があらわれた場合には、眼科的検査を実施するなど適切な処置を行うこと。
(3)その他の副作用
製造販売後に実施した切除不能又は再発胃癌症例を対象とした臨床試験の TS-1 単独投与においては、流涙 16.0% と副作用発現率が高かった。
(ティーエスワン配合カプセルT20/ティーエスワン配合カプセルT25/ティーエスワン配合顆粒T20/ティーエスワン配合顆粒T25 医薬品添付文書、2017年7月改訂(第30版))
もっと知る!
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤における流涙は、角膜障害による涙液分泌亢進や涙道障害による涙液排出低下がその原因として疑われている。角膜障害の原因として、フルオロウラシルは細胞分裂の盛んな細胞においてDNA、RNAの合成障害を引き起こすため、涙液中に分泌されたフルオロウラシルが、活発に分裂している角膜上皮細胞や輪部の角膜上皮幹細胞を障害することで発症すると考えられている[文献1]。また、涙道障害の原因として、フルオロウラシルを含んだ涙液が涙道を通過することで涙道粘膜の炎症、涙道扁平上皮の肥厚と間質の線維化をきたし、その結果涙道狭窄・閉塞が生じると考えられる[文献2]が、完全には解明されていない。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」では、2004年4月から2017年11月までの間にテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤による流涙が9例(転帰:回復2例、軽快4例、未回復2例、不明1例)報告されている[文献3]。
文献)
1.細谷友雅:眼科 54(1) 27-32, 2012.
2.柴原弘明 他:癌と化学療法 37(9) 1735−1739, 2010.
3. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)ホームページ「副作用が疑われる症例報告に関する情報」