事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.20
造影剤を使う検査の際の服薬指示は?
- 代謝内科
難易度:★★☆
- 疾患名:2型糖尿病
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- 医薬品販売名:メトグルコ錠250mg
- 医薬品一般名:メトホルミン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方>70歳代・男性、A病院 代謝内科
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- メトグルコ錠250mg
- 6錠 1日3回 毎食後 28日分
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- オングリザ錠2.5mg
- 1錠 1日1回 朝食後 28日分
Subjective data:主観的情報
来週、造影剤を使った検査をするから、今飲んでいるお薬は、検査の日の朝は飲まないようにいわれたんだ。でも、お昼からご飯が食べられるから、お昼からまた飲み始めていいのかな?
Objective data:客観的情報
・来週、ヨード造影剤検査予定
⇒検査日の朝の糖尿病治療薬中止についてだけ、患者が病院で交付された検査の説明用紙に記載
⇒ご本人も医師や看護師から検査の朝のみの服薬中止しか説明されていない
・腎機能低下(-)
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
ヨード造影剤とメトグルコ錠の併用は、併用注意であり、併用で乳酸アシドーシスを起すことがあるため、メトグルコ錠はヨード造影剤での検査前の一時中止はもちろん、ヨード造影剤投与後も48時間は再開しないこととされている。そのため、検査から2日間はメトグルコ錠のみ中止継続の必要があり、医師へ疑義照会をした上で、再開日を伝える。
オングリザ錠は、検査前の一時中止のみで特に再開に問題はない。
Plan:計画
・疑義照会後⇒メトグルコ錠の適切な期間での中止・再開がされているか確認していく。
・ヨード造影剤による腎機能低下は一過性であるが、継続的にみられていないか確認していく。
説明事例
「今回、メトグルコ錠ヨード造影剤は相互作用があるので、検査前の一時中止以外にも、ヨード造影剤投与後に 48時間は空ける必要があります。そのため、医師にお電話にて確認いたしました。メトグルコ錠だけは、検査から 2日後の朝食後から再開してください。また、オングリザ錠は、検査当日の昼食後から、その日の朝食後分として、再開してください。」
解答に必要な医薬品情報
メトグルコ錠の添付文書・インタビューフォーム
安全性 (使用上の注意等)に関する項目
<重要な基本的注意とその理由及び処置方法>
ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、メトホルミンの併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前はメトホルミンの投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間はメトホルミンの投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。
<相互作用の機序・危険因子>
ヨード造影剤とメトホルミンは併用注意となっている。併用により腎機能が低下し、メトホルミンの排泄が低下して血中濃度が上昇するため、乳酸アシドーシスを起こすと考えられている。
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造影剤と他のビグアナイド系糖尿病との併用注意について[文献1-2]
1. ブホルミン塩酸塩錠(商品名:ジベトス錠、ジベトンS腸溶錠)
ブホルミンに関しても、メトホルミンと同様に、ヨード造影剤との併用により、腎機能を低下させ、ブホルミンの腎排泄を低下させて血中濃度を上昇させ、乳酸アシドーシスを起こすことがある。そのため、ヨード造影剤での検査前は一時的に中止、ヨード造影剤投与後 48 時間はブホルミンの投与を再開しないこととされている。
乳酸アシドーシスの症状は、全身倦怠、疲労感、脱力感で意識が混濁することがあり、また、悪心・嘔吐・下痢等の胃腸症状がある。もし、緊急に検査を行う必要がある場合には、患者の状態を注意深く観察し、血中乳酸値の上昇、血液 pH の低下等に注意することとされている。
2. メトホルミン塩酸塩配合錠(商品名:イニシンク配合錠、エクメット配合錠LD/エクメット配合錠HD、メタクト配合錠LD/メタクト配合錠HD、メトアナ配合錠LD/メトアナ配合錠HD)
メトホルミンとの配合錠も同様に、ヨード造影剤は併用注意であり、ヨード造影剤での検査前は一時的に中止、ヨード造影剤投与後48時間は配合錠の投与を再開しないことは共通である。
[文献]
1. ジベトス錠50mg インタビューフォーム、改訂第7版、日医工株式会社、2018年6月.
2. 日本医学放射線学会・日本放射線専門医会 安全性に関する情報(2012.5.2)
ヨード造影剤(尿路・血管用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意について(第 2 報) (2019.2.19アクセス)