事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.19
投与開始2ヵ月間は2週間に1度の血液検査が必要な薬剤は?
- 内分泌系
難易度:★☆☆
- 疾患名:甲状腺機能亢進症
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- 医薬品販売名:メルカゾール錠5mg
- 医薬品一般名:チアマゾール
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 60歳代・女性、内科
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- メルカゾール錠5mg
- 4錠 1日2回 朝・夕食後 14日分
Subjective data:主観的情報
まだ冬でもないのに、よく風邪をひくみたいで、喉の痛みや熱が出たりすることがありました。
Objective data:客観的情報
現在は、喉の痛み(-)、発熱(-)であるが、数日前まで感冒様症状あり。
・メルカゾールは前回と同じ処方。
・前回(2週間前)も本日も血液検査実施せず。(血液検査の実施は、投与開始時に1回、その2週間後に1回のみで、本日検査をしないとその間隔が1ヶ月以上空く)
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
患者の甲状腺に関する症状は落ち着いているが、血液監査の実施と結果について確認したところ、前回の受診に引き続き代理の医師の診察だったためか、血液検査を実施しておらず、2週間以上の検査間隔が空いていた。また、感冒症状になりやすいのは、メルカゾールによる顆粒球の減少や無顆粒球症の症状(咽頭痛、発熱等)が現れた可能性も考えられる。
Plan:計画
メルカゾール錠服用開始 2ヶ月間は、無顆粒球症が現れる可能性が高く、その関連性を血液検査の結果からも評価するためにも、2週間に 1回の血液検査が必要なので、処方医に確認する。
説明事例
「風邪になりやすくなったのは、メルカゾールを飲み始めてから多くなりましたか?メルカゾールを飲み始めて2ヶ月位は、風邪を引きやすくなることがあることがあります。血液検査をしてメルカゾールと関連があるか確認する必要があるのですが、血液検査をしていらっしゃらないみたいですね。これから先生にその件について、ご相談してもよろしいでしょうか。」
解答に必要な医薬品情報
メルカゾール錠の服用にあたり、その警告について
●メルカゾール錠は、副作用として「重篤な無顆粒球症」が発現することがある。その副作用は、メルカゾール錠を服用開始後、主に2ヶ月以内に発現し、死亡に至った症例も報告されている。そのため、少なくとも投与開始後2ヶ月間は、原則として2週に1回、それ以降も定期的に白血球分画を含めた血液検査を実施し、顆粒球の減少傾向等の異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うことと警告されている。また、一度投与を中止して、投与を再開する場合にも同様に注意されている。
●メルカゾール錠を服用中に、無顆粒球症の症状(咽頭痛、発熱等)があらわれた場合には、速やかに主治医に連絡することとされている。また、少なくとも投与開始後2ヶ月間は原則として2週に1回、定期的な血液検査を行う必要があるので、通院するように、患者へは説明・指導していくように警告がされている。
[文献]
1.2019年8月時点のメルカゾール錠5mgの添付文書(2015年10月改訂第19版)
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定期的に臨床検査が必要な医薬品は多数あり、メルカゾール錠のように定期的な血液検査の期間を明確に指示されている医薬品もある。メルカゾール錠以外でも、院外薬局でもよく取り扱われる医薬品では、チクロピジン(販売名:パナルジン錠)や、テガフール・ウラシル配合剤(販売名:ユーエフテイ配合カプセル)、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン錠)などが挙げられる。例えば、サラゾスルファピリジンでは、投与開始前には必ず血液学的検査(白血球分画を含む血液像)、肝機能検査及び腎機能検査を実施することとされ、また、投与中は定期的に(原則として、投与開始後最初の3ヵ月間は2週間に1回、次の3ヵ月間は4週間に1回、その後は3ヵ月ごとに1回)、血液学的検査及び肝機能検査を行い、腎機能検査についても定期的に行うこととされている。
近年、電子カルテ上で検査が必要な医薬品を処方する際に、検査をするようにポップアップがでたり、医薬品名の横にマークをつけたり、様々な工夫をしている施設もあるが、見逃されることもあるため、薬剤師がしっかり注意する必要がある。
[文献]
1. 町田充 他,臨床化学 31:76-86, 2002.
2. 2018年9月時点の各医薬品の添付文書