事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.17
感冒患者が咳止めを服用したら、音が変に聞こえるようになった?
- 呼吸器系
難易度:★★☆
- 疾患名:急性気管支炎
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- 医薬品販売名:フラベリック錠20mg
- 医薬品一般名:ベンプロペリンリン酸塩
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 30歳代・女性、内科クリニック
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- フラベリック錠20mg
- 3錠 1日3回 毎食後 7日分
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- 【般】カルボシステイン錠500mg
- 3錠 1日3回 毎食後 7日分
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- 【般】アンブロキソール
塩酸塩錠15mg - 3錠 1日3回 毎食後 7日分
- 【般】アンブロキソール
Subjective data:主観的情報
熱は下がったのですが、咳と痰が続いています。音が変に聞こえるような感じがありますが、風邪が治っていないので仕方ないですね。
Objective data:客観的情報
発熱(-)、咳・喀痰(+)、聴覚異常の疑いあり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
解答・解説を見る
解答
Assessment:評価
「音が変に聞こえる」との訴えは、フラベリックの副作用の可能性も考えられる。
Plan:計画
聞こえに関して確認。フラベリックとの関連性を評価する。
説明事例
「音が変に聞こえるとは、具体的にどのように感じますか? 現在飲まれている咳止めの薬には、音が低く聞こえるなどの音感が変化する副作用が報告されています。もしかするとお薬の影響かもしれません。咳がおさまっていないようでしたら、お薬の変更が必要かどうか、これから先生にご相談してもよろしいでしょうか。」
解答に必要な医薬品情報
フラベリック錠の添付文書
【使用上の注意】
1.副作用
その他:聴覚異常(音感の変化等)(自発報告のため頻度不明)
もっと知る!
ベンプロペリンリン酸塩服用による聴覚異常について、その頻度や発症機序などは不明である。検索しうる限りでは学術論文等での報告はないが、インターネット上では特に絶対音感のある患者の報告を散見する。ベンプロペリンの内服によって聴覚異常感を発症した症例を示す。
<症例>
41歳女性。既往歴、家族歴ともに特記事項なし。感冒症状のため近医内科を受診し、咳症状に対してベンプロペリンを含めた投薬を受けた。その数日後から聴覚異常が出現し、両耳とも音が半音下がって聞こえるようになった。内服中止を指示されるも症状改善しないとのことで内科初診の約3週間後に耳鼻科受診。精密聴力検査等では明らかな異常を認めず、他覚的に評価することは困難であった。2週間程度の休薬で症状が改善された報告が多数を占めるが、本症例は現在のところ改善されておらず、その原因は不明である。[文献1]。
PMDAへの報告例
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」では、2004年4月から2018年1月までの間にベンプロペリンを被疑薬とした聴覚に関する副作用が14例(難聴2例、一過性難聴1例、聴覚障害3例、聴力低下6例、内耳障害1例、感音性難聴1例)報告されている[文献2]。
[文献]
1.小原修幸,OtologyJapan26(4):557-557,2016.
2.医薬品医療機器総合機構(PMDA)ホームページ「副作用が疑われる症例報告に関する情報」(2018.06.11アクセス)