事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.16
残尿感を訴える感冒患者への薬学的管理のポイントは?
- 感染症
難易度:★☆☆
- 疾患名:感冒
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- 医薬品販売名:PL配合顆粒
- 医薬品一般名:
サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 50歳代・男性、内科クリニック
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- PL配合顆粒
- 3g 1日3回 毎食後 5日分
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- ネオヨジンガーグル 7%
- 30mL 1日数回 うがい
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- SPトローチ 0.25 mg「明治」
- 30錠 1日6回 口中で溶解
患者は感冒症状が続き、2度目の受診。PL 配合顆粒は前回から服用中。前立腺肥大の既往なし。
Subjective data:主観的情報
風邪がなかなか治らないね。最近、普段よりもおしっこの勢いが弱いし残尿感もあるんだ。風邪と関係あるかな?
Objective data:客観的情報
併用薬なし。排尿困難の訴えあり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
PL配合顆粒に含まれているプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用を有するため、排尿困難を引き起こす可能性がある。当該薬服用前における排尿障害の有無を確認し、早期発見、早期対応を心がける。
Plan:計画
PL配合顆粒服用による排尿困難が疑われる場合、薬剤変更に関する疑義照会および早期受診を勧奨する。
説明事例
「風邪がなかなか良くならないのですね。今回も、前回と同じ総合感冒薬が処方されています。排尿に関してお困りのことがあるようですが、薬を飲む前から同様の症状はありましたか? もしかすると、この風邪薬が影響しているかもしれません。この薬を服用することで、残尿感などの排尿トラブルが起こることがあるのです。放っておくと症状がひどくなることもありますので、薬を変更する必要があるか、これから先生に確認させていただいてもよろしいでしょうか。」
解答に必要な医薬品情報
PL配合顆粒の添付文書
【禁忌】
6. 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[本剤中のプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用を有し、排尿困難を悪化させるおそれがある。]
【使用上の注意】
4.副作用
その他:尿閉(5% 以上又は頻度不明)
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薬剤性の排尿困難・尿閉とは
薬剤投与による排尿困難・尿閉の病態は、膀胱収縮力の低下あるいは尿道抵抗の増大である。膀胱排尿筋にはアセチルコリン受容体の一種であるムスカリン受容体が豊富に存在し、副交感神経刺激によりアセチルコリンが分泌され、ムスカリン受容体刺激により排尿筋収縮を惹起するが、ムスカリン受容体の阻害を介した抗コリン作用を有する薬剤の投与により、排尿筋収縮力の低下が起こり得る[文献 1]。
早期発見と早期対応のポイント
前立腺肥大症などの下部尿路閉塞、あるいは膀胱排尿筋の収縮力低下を有する症例において、薬剤性の排尿困難・尿閉が起こりやすい。膀胱排尿筋の収縮障害は、糖尿病、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊椎管狭窄症、直腸癌や子宮癌に対する根治手術などによる末梢神経障害に伴う神経因性膀胱において見られることがあるが、明らかな神経疾患とは関係なく、加齢による膀胱機能変化として見られることも少なくない。したがって、膀胱機能に影響する可能性のある薬剤投与にあたっては、投与前に排尿障害の有無について評価を行うことが、早期発見と早期対応のために一次的に重要なポイントとなる[文献 1]。
[文献]
1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル「尿閉・排尿困難」平成21年5月(2018.06.26 アクセス)