事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.15
予防法を説明したにもかかわらず、モーラステープによる光線過敏症が発現したのはなぜ?
- 骨・関節・カルシウム代謝
難易度:★☆☆
- 疾患名:挫傷、打撲
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- 医薬品販売名:モーラステープ L 40 mg
- 医薬品一般名:ケトプロフェン貼付剤
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<前回処方> 50歳代・女性、整形外科
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- モーラステープ L 40 mg 10 cm × 14 cm
- 35枚 1 日 1 回 貼付
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- 【般】ロキソプロフェン Na 錠 60 mg
- 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 35日分
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- ミオナール錠 50 mg
- 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 35日分
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- ムコスタ錠 100 mg
- 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 35日分
Subjective data:主観的情報
先日もらった湿布(モーラステープ)を痛いところに貼っていたら、右腕が赤くなっちゃったの。何かいい塗り薬はないかしら。
Objective data:客観的情報
右腕に赤い発疹出現。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
患部の状態から、モーラステープによる光線過敏症が疑われた。前回薬歴からは光線過敏症について説明済みと確認できたが、患者は痛みを感じる部位があちこち変わり、さまざまな部位に貼付していた。光線過敏症に対する指導不足や患者の認識の甘さがあったと考えられる。投薬時は、具体的な貼付部位や露光機会などの生活習慣を聞き取り、紫外線にあたる機会を少なくするよう、患者のライフスタイルに沿った指導をするよう心がける。また、今回の件はトレースレポートにて処方医への情報提供も必要と考える。
Plan:計画
モーラステープによる副作用の可能性があることを伝え、皮膚科への受診勧奨を行う。それと同時に処方医へのトレースレポートにて情報提供をする。また、次回来局時、皮膚科受診をしたか、受診した場合、その結果を聴取する。
説明事例
「モーラステープを貼っていたら、右腕が赤くなってしまったのですね。これは、モーラステープによるかぶれか、テープを貼ったまま日光にあたったせいで、赤くなったのかも知れません。このままテープを使い続けたり、日光にあてたりするとさらに悪化することがあるので、使用を中止して先生にご相談するか、または、皮膚科にかかった方がいいですよ。また、テープをはがした後もくすりは皮膚に残っていて赤くなることがあるので、当分の間は濃い色の服やサポーターなどで貼った部分を日光から遮ってくださいね。」
解答に必要な医薬品情報
モーラステープ 20 mg の添付文書
【使用上の注意】
2. 重要な基本的注意
2)光線過敏症を発現することがあるので、使用中は天候にかかわらず、戸外の活動を避けるとともに、日常の外出時も、本剤貼付部を衣服、サポーター等で遮光すること。なお、白い生地や薄手の服は紫外線を透過させるおそれがあるので、紫外線を透過させにくい色物の衣服などを着用すること。また、使用後数日から数カ月を経過して発現することもあるので、使用後も当分の間、同様に注意すること。異常が認められた場合には直ちに本剤の使用を中止し、患部を遮光し、適切な処置を行うこと。
4.副作用
(1)重大な副作用
4)光線過敏症(頻度不明)
本剤の貼付部を紫外線に曝露することにより、強い瘙痒を伴う紅斑、発疹、刺激感、腫脹、浮腫、水疱・びらん等の重度の皮膚炎症状や色素沈着、色素脱失が発現し、さらに全身に皮膚炎症状が拡大し重篤化することがあるので、異常が認められた場合には直ちに使用を中止し、患部を遮光し、適切な処置を行うこと。なお、使用後数日から数カ月を経過してから発現することもある。
もっと知る!
腰痛症等を適応としたモーラステープ 20 mg の発売時は、接触皮膚炎は認められるものの光線過敏症は報告されていない。承認後、症状が全身におよぶ重篤な光線過敏症の副作用が、医師などの自発的報告によって集積されたため、2001 年に添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」に光線過敏症に関する注意喚起が追記され、「重大な副作用」として光線過敏症が頻度不明で追加となった。
医療用医薬品のケトプロフェン外用剤(テープ以外を含む)について、1986 年の発売から 2010 年 5 月までに報告された皮膚障害の副作用は 4,252 例であった。そのうち光線過敏症は 2028 例(うち重篤症例は 47 例)に認められ、テープ剤で最も多く報告されている[文献 1]。
モーラステープによる光線過敏症は、大部分が紫外線量の多い夏季(5~8 月)に発現しており、過去 10 年間(2005 年~2014 年)では、夏季での発現が報告全体の 74%を占めていた。発現部位については、手首、手部、下腿など、露光しやすい部位で多く報告されている[文献 2]。
[文献]
1. 医薬品・医療機器等安全性情報 No.276、p.3-8 厚生労働省医薬食品局,平成 23 年
2. 久光製薬安全性情報 No.30(2015 年夏)