事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.14
経口ステロイド薬長期服用患者への薬学的管理のポイントは?
- 免疫・炎症・アレルギー
難易度:★☆☆
- 疾患名:全身性エリテマトーデス
-
- 医薬品販売名:プレドニゾロン錠 5 mg
- 医薬品一般名:プレドニゾロン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 60 歳代・女性、膠原病・リウマチ内科
-
- プレドニゾロン錠 5 mg
- 2 錠 1 日 1 回 朝食後 30日分
ほか
Subjective data:主観的情報
今飲んでいる薬って「ステロイド」ですよね。先生からしばらく飲み続けることになると言われたのですが、ずっと飲んでいて副作用とか大丈夫ですか?
Objective data:客観的情報
経口ステロイド薬の長期服用に対する不安あり。
既往歴:2 年前、階段からの転落による足首骨折
閉経後(低骨密度の疑い)
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
患者は閉経後であり、2 年前に階段から転落したことで足首の骨折既往がある。経口ステロイド薬を長期に服用することで薬剤性骨粗鬆症および骨折のリスクが高いため、注意が必要である。
Plan:計画
薬剤性骨粗鬆症について説明。早期発見、早期対応を心がける。また、副作用の不安から患者の服薬アドヒアランスが低下しないよう随時確認していく。
説明事例
「たしかにステロイド薬をずっと飲み続けていると副作用が心配になりますよね。ステロイド薬の副作用には、胃が荒れたり、骨に影響がでて、骨折しやすくなることがあります。用法、用量をきちんと守っていれば、そんなに心配はないのですが、心当たりもないのに腰や背中が痛いなど、何か気になる症状がある場合は先生や薬剤師に相談してください。副作用が心配だからといって、ステロイド薬を勝手にやめてしまうと、元の病気が悪化したり具合が悪くなったりすることがあるので、自己判断ではやめないでくださいね。」
解答に必要な医薬品情報
プレドニゾロン錠 5 mg の添付文書
【使用上の注意】
4.副作用
(1)重大な副作用
6)骨粗鬆症、大腿骨及び上腕骨等の骨頭無菌性壊死、ミオパチー(頻度不明)
もっと知る!
医薬品によって起こる骨粗鬆症の原因として最も頻度が高いのは副腎皮質ステロイド薬(以下経口ステロイド薬)であり、長期ステロイド治療を受けている患者の 30~50% に骨折が起こるとの報告もある[文献 1,2]。
骨量減少だけで自覚症状はないが、骨折(多くは椎体骨折)を生じた場合は重度の腰背部痛を自覚する。椎体骨折リスクは服用開始後 3~6 カ月で最大となり、以後プラトーとなる。プレドニゾロン換算で 2.5 mg/日未満の服用でも椎体骨折リスクは 1.55 倍となり、7.5 mg/日以上では 5 倍以上になる。また、骨折のリスク因子としては、加齢、低骨密度、既存骨折、喫煙、骨折家族歴などが挙げられる[文献 1]
経口ステロイド薬開始後の骨減少率ははじめの数カ月間は 8~12% と高く、その後は 2~4%/年の割合で減少する。加えて、骨密度減少が起きる前に骨折リスクの増加が起きる。従って、経口ステロイド薬治療開始後すみやかに骨密度低下を予防し、骨折リスクを低下させることが重要である。ステロイド性骨粗鬆症においてもライフスタイルの改善、食事栄養指導、運動療法は重要であり、原発性骨粗鬆症に準じて指導する[文献 2]。
[文献]
1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル「骨粗鬆症」平成 21 年 5 月
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1m01.pdf (2018.03.23 アクセス)
2. 日本骨代謝学会:ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014 年改訂版
http://jsbmr.umin.jp/pdf/gioguideline.pdf (2018.03.23 アクセス)