事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.13
クラリス DS とムコダイン DS を服用する患児への薬学的管理のポイントは?
- 感染症
難易度:★☆☆
- 疾患名:急性気管支炎
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- 医薬品販売名:クラリスドライシロップ 10% 小児用 他、ムコダイン DS 50% 他
- 医薬品一般名:クラリスロマイシン、カルボシステイン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 1 歳(10 kg)・男児、小児科クリニック
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- クラリスドライシロップ 10% 小児用
- 1 g 1 日 2 回 朝夕食後 5 日分
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- ムコダイン DS 50%
- 0.6 g 1 日 3 回 毎食後 5 日分
Subjective data:主観的情報
普段、粉薬は水に溶かしてスポイトで飲ませています。
Objective data:客観的情報
散剤は水に溶かせば服用できる。クラリス DS とムコダイン DS の同時処方は初めて(お薬手帳で確認)。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
クラリス DS は、酸性薬剤であるムコダイン DS と同時服用することで強い苦味を呈する。両薬剤を併用する場合には、苦味発現を防止するために服用間隔をあける等の注意が必要である。
Plan:計画
クラリス DS とムコダイン DS は混合せず、別々に服用すること。次回、両薬剤の服薬状況確認。
説明事例
「粉薬は水に溶かして飲めているのですね。今回は、抗生物質と痰をだしやすくするお薬が出ています。朝と夕は両方飲むことになるのですが、これらのお薬は、混ぜると、とても苦くなってしまうので、混ぜないようにしてくださいね。混ぜて強い苦味が出ると、お子さんがとても飲みづらくなってしまうので、別々の水に溶かし、少し間をあけて飲ませるようにしてください。もしくは白湯などで一度口をゆすいでから飲ませてあげるようにしてください。あと、この抗生物質は、水以外のオレンジやりんごなどの酸味のあるジュースに溶かすと苦くなるので、それも注意してくださいね」
解答に必要な医薬品情報
クラリスドライシロップの服用性の改善[文献 1]
クラリスドライシロップ 10% 小児用は、発売当初のドライシロップ(1996 年)は、原薬であるクラリスロマイシンの苦味をマスキングするためにワックスマトリックス粒子とし、これに賦形剤や矯味剤を添加して調製した製剤であった。しかし、患児によっては苦味のために服用困難な場合もあり、さらなる苦味の軽減が大きな課題であった。そこで、ワックスマトリックス粒子を高分子皮膜でコーティングした製剤が一部変更申請され、2006 年に発売となった。このような苦味マスキングを行った結果、新製剤は水で服用すれば、苦味を感じにくい製剤設計となっている。しかし実際には、スポーツドリンク等の酸性飲料で飲ませているケースもあり、そのような場合には直ちに苦味が発現するという問題もある。
[文献]
1. 大正製薬株式会社生産技術研究所, 薬剤学 69(6): 416-419, 2009.
もっと知る!
2006 年に発売されたクラリスロマイシン DS 製剤は、懸濁性や苦味のマスキング法に改良を加え、口腔内の pH 6.8 程度の環境下では原薬が溶け出さないよう工夫されている。一方、ムコダイン DS は酸性製剤であるため、クラリスロマイシン DS を同時に服用すると、前述のような製剤加工が施してあっても、酸性条件下で製剤加工が壊れてクラリスロマイシン原薬が溶出し、強い苦味が発現することが知られている[文献 2]。本報告では、苦味発現に関して後発品を含む各製剤を対象とした検討を行っているため参照されたい。
[文献]
2. 松尾律子 他, 薬学雑誌 128(3): 479-485, 2008.