事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.12
痔を訴えたエリキュース服用患者への薬学的管理のポイントは?
- 循環器系
難易度:★☆☆
- 疾患名:非弁膜症性心房細動
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- 医薬品販売名:エリキュース錠 2.5 mg,5 mg
- 医薬品一般名:アピキサバン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 60歳代・男性、総合病院
-
- エリキュース錠 5 mg
- 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 14 日分
Subjective data:主観的情報
毎日きちんと飲んでいるよ。続けることが大事って言われているからね。そういえばまた痔になったかも。他は変わりないよ。
Objective data:客観的情報
コンプライアンス良好。便潜血の疑いあり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
痔の訴えは、エリキュースの副作用である血便の可能性も考えられる。いつ頃どの程度の出血かを確認し、早めに主治医へ相談するようすすめる。また、主治医にも、薬局からトレースレポートにて情報提供をしておく必要があると考える。
Plan:計画
副作用の可能性があることを伝え、その他の症状を確認する。なるべく早く受診して主治医に伝えるように注意し、主治医には薬局からトレースレポートを提出する。また、副作用の不安から患者の服薬アドヒアランスが低下しないように、随時確認していく。
説明事例
「毎日忘れずにお薬を飲めていらっしゃるようで、よかったです。ただ、先ほどおっしゃっていた痔のことですが、気づいたのはいつ頃ですか?出血が続いていませんか?このお薬は、血液をさらさらにして血栓ができないようにしてくれるお薬ですが、効きすぎると出血しやすくなることがあります。もし、便が黒っぽかったり、血便が増えたりしたら、お薬の副作用かもしれませんので、できるだけ早く先生にそのことを伝えてください。ただ、先生にみてもらうまでは、ご自分の判断でお薬を飲むのをやめないようにしてくださいね。」
解答に必要な医薬品情報
エリキュース錠の添付文書の2.重要な基本的注意、4.副作用の項目を参照されたい。
もっと知る!
エリキュース投与中は、出血や貧血等の徴候を十分に観察し、必要に応じて、血算値(ヘモグロビン値)、便潜血等の検査を実施し、急激なヘモグロビン値や血圧の低下等の出血徴候を確認すること。臨床的に問題となる出血や貧血の徴候が認められた場合には、エリキュースの投与を中止し、出血の原因を確認すること。短時間で止血可能な小出血の際には、ベネフィットとリスクを慎重に評価して、エリキュースの継続投与を検討する。エリキュース投与中に重篤な出血が発症した場合の処置とその効果に関する十分なデータはなく、エリキュースの抗凝固作用の中和方法は、研究段階である。出血が認められた場合は、出血の重症度・部位に応じて、患者ごとに適切な処置を講じること[文献 1]。
消化管出血の場合、吐血、下血、血便、腹痛、腹部膨満感等の症状が出現する。大量出血の場合はショックとなり、中等度の場合は貧血の原因となる。大量下血や吐血の前に、食欲不振、腹痛、吐き気、腹部膨満感等の症状が現れることがある。また、黒色便(タール便)がみられることもある[文献 2]。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」では、2004 年 4 月から 2017 年 12 月までの間にアピキサバンを被疑薬とした便潜血が 12 例(被疑薬の処置:投与量変更せず 3 例、投与中止 8 例、不明 1 例)、(転帰:回復 1 例、軽快 2 例、不明 9 例)報告されている[文献 3]。
[文献]
1. ブリストル・マイヤーズ スクイブ:エリキュース錠を適正にご使用いただくために, 2016 年 7 月作成
2. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル「出血傾向」平成 19 年 6 月(2018.05.17 アクセス)
3. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)ホームページ「副作用が疑われる症例報告に関する情報」(2018.05.17 アクセス)