事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.11
小柴胡湯とウルソ錠を服用中患者への薬学的管理ポイントは?
- 消化器系
難易度:★☆☆
- 疾患名:慢性肝炎
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- 医薬品販売名:ツムラ小柴胡湯エキス顆粒(医療用) 他、ウルソ錠 50 mg, 100 mg 他
- 医薬品一般名:小柴胡湯エキス顆粒、ウルソデオキシコール酸
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 60 歳代・男性、内科クリニック
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- ツムラ小柴胡湯エキス顆粒(医療用)
- 7.5 g 1 日 3 回 毎食前 14 日分
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- ウルソ錠 50mg
- 3 錠 1 日 3 回 毎食後 14 日分
Subjective data:主観的情報
いつもの階段をのぼってきたら、息切れがひどくてハーハーしちゃったよ。今までこんなことなかったのに、運動不足かね。
Objective data:客観的情報
継続処方。息切れの訴えあり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
解答・解説を見る
解答
Assessment:評価
服用中の薬剤は、いずれも重大な副作用に間質性肺炎がある。息切れの訴えから、間質性肺炎の可能性を評価する。
Plan:計画
息切れの他、空咳や発熱の有無と症状が発現した時期を確認。間質性肺炎を考慮し、早期受診を勧奨する。また、間質性肺炎の可能性が高い場合は、主治医へトレースレポートにて情報提出する。
説明事例
「普段とは違う息切れがするのですね。それはいつ頃からありますか?他に、いつもと違った症状等はありませんか? 今、お飲みになっているお薬で、気をつけなければいけない副作用のひとつに『間質性肺炎』があります。主に息切れ、空咳、発熱などの症状がでます。検査が必要な場合もありますので、早めに受診して医師にご相談ください。」
解答に必要な医薬品情報
ツムラ小柴胡湯エキス顆粒(医療用)の添付文書
【使用上の注意】
4.副作用
(1) 重大な副作用
1) 間質性肺炎(0.1% 未満):発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部 X 線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと。
ウルソ錠の添付文書
【使用上の注意】
3.副作用
(1) 重大な副作用
間質性肺炎(頻度不明):発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部 X 線異常を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
もっと知る!
薬剤性間質性肺炎の発症機序は、大きく 2 種類に分けられる。一つは、抗悪性腫瘍薬のような細胞傷害性薬剤によって肺の細胞自体が傷害を受けて生じるもので、使用してから発症まで慢性(数週間~数年)に経過するタイプである。もう一つは、医薬品に対する免疫反応が原因と考えられるもので、医薬品の使用後、急速(1~2 週間程度)に発症するとされる。ただし、抗悪性腫瘍薬でも後者の発症様式をとるもの、またゲフィチニブのように発生機序がよくわかっていないものもある[文献 1]。
小柴胡湯による間質性肺炎
1996 年に小柴胡湯が原因と考えられる間質性肺炎の死亡例が厚生省の緊急安全情報により報告され、同報告を受けて全国調査による検討が行われた。小柴胡湯に起因する薬剤性肺障害 100 例の検討では、投与中止のみで軽快した例が 12 例、ステロイド経口投与が 29 例、ステロイドパルス療法が 54 例であった。90 例はすみやかに治癒しているが、10 例は死亡している。死亡例の特徴は、症状出現から薬剤中止までの期間が長く(生存:5.8 日、死亡:15.9 日)、基礎疾患として呼吸器疾患の合併が多かった(生存:2.2%、死亡:30%)。また、肝疾患も考慮しておく必要がある。HCV 感染そのものが間質性肺炎の発症・増悪に関与している可能性がある[文献 2]。
[文献]
1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル「間質性肺炎」平成 18 年 11 月(2018.06.20 アクセス)
2. 日本呼吸器学会:[短縮版]薬剤性肺障害の診断・治療の手引き, 2013 年(2018.06.20 アクセス)