事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.1
SGLT-2 阻害薬服用中の患者への薬学的管理のポイントは?
- 代謝系
難易度:★★☆
- 疾患名:2型糖尿病
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- 医薬品販売名:スーグラ錠50mg
- 医薬品一般名:イプラグリフロジン L-プロリン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
前回からメトグルコ錠にスーグラ錠が追加された。
<処方> 60歳代・男性、内科クリニック
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- メトグルコ錠500mg
- 3錠 1日 3回 毎食後 28日分
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- スーグラ錠50mg
- 1錠 1日 1回 朝食後 28日分
Subjective data:主観的情報
最近、トイレにいく回数が増えて。トイレが近くなるのが嫌で、水分はあまり取ってないよ。
Objective data:客観的情報
HbA1c:前回7.0→今回6.8、口渇なし
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
患者はトイレの回数増を嫌い、水分摂取を控えているようだが、SGLT-2 阻害薬であるスーグラを服用しているため、脱水を起こさないために適度な水分補給が必要である。
Plan:計画
患者に適度な水分摂取の必要性を説明。次回、水分摂取を行えているか、脱水の症状はなかったか確認する。
説明事例
「スーグラを飲み始めてからトイレの回数が増えたのですね。それが嫌で、水分を取るのを控えていらっしゃるのですね。このスーグラというお薬は、体内の糖を尿の中に排泄することで血糖値を下げますが、そのためトイレの回数が増えたり、尿の量が増えたりすることがあります。いつもより水分が多く排泄されてしまいますので、きちんと水分を取らないと脱水症状を起こすことがあります。糖尿病の検査値も下がってきていますので、きちんと水分を取って、もう少し続けましょう。どうしてもトイレの回数が増えるのが嫌であれば、違う種類のお薬に変更してもらえないか、先生に相談しましょう。」
解答に必要な医薬品情報
スーグラ錠50mgの添付文書より抜粋
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※必ず、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
【使用上の注意】
2.重要な基本的注意
本剤の利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行うこと。脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者や利尿剤併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。
4.副作用(1)重大な副作用
脱水(頻度不明):脱水があらわれることがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行うこと。口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。脱水に引き続き脳梗塞を含む血栓・塞栓症等を発現した例が報告されているので、十分注意すること。
5.高齢者への投与
高齢者では脱水症状(口渇等)の認知が遅れるおそれがあるので、注意すること。
(スーグラ錠 25mg、スーグラ錠 50mg 医薬品添付文書、2016年6月改訂(第7版)より)
もっと知る!
日本糖尿病学会より「SGLT2 阻害薬の適正使用に関する Recommendation」が2014年6月13日に策定され(2016年5月12日改訂)、「脱水」に関するRecommendationも重要な項目として記載されている。予防と対処法を(1)~(5)に記載する。
(1)脱水リスクが高い患者においてはSGLT2 阻害薬を慎重に投与する。高齢者や利尿剤併用患者等の脱水リスクが高い患者には、慎重な投与と脱水への注意が必要である。利尿薬とSGLT2 阻害薬の併用は推奨されていない。
(2)適度な水分補給を行う。患者へ脱水を起こす可能性があることを説明し、適度な水分補給を行うことを指導する。とくに投与の初期には血糖値が高いことから尿糖排泄量も多く、多尿・頻尿の可能性が高くなるため、体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水のリスクが高い患者では、より注意が必要である。
(3)脱水が疑われる場合は、薬や補液等の適切な処置を行う。口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の脱水初期症状が認められ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行う。
(4)シックデイにはSGLT2 阻害薬を休薬する。発熱・下痢・嘔吐などがある時ないしは食欲不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には万全の注意が必要であり、SGLT2 阻害薬は必ず休薬する。患者へも予めよく教育をしておく。
(5)過度なアルコール摂取をさける。過度なアルコール摂取は脱水状態となることから、アルコール摂取は水分補給にならないことを患者に説明する。
文献)
日本糖尿病学会、SGLT2 阻害薬の適正使用に関する Recommendation、2016年5月12日改訂