帝京平成大学 井手口直子先生の

在宅はじめてコミュニケーション

在宅業務をはじめたばかり、これから在宅業務を行うことを考えている薬剤師のみなさん。在宅のコミュニケーションに関する悩みに、井手口直子先生が答えます。

  • 第4回

    他職種とのコミュニケーション

    2018.07.24

第1~3回のコラムをご覧いただいて、在宅医療を行う上で、訪問薬剤師は、単に処方された薬を正確に調剤して患者さんのお宅に薬を届けることだけが目的ではないことが、だんだんとお分かりいただけたのではないでしょうか。
そんな訪問薬剤師に必要なことの1つが、他職種連携です。
「他職種連携」という言葉とその必要性は、この数年でもかなり叫ばれていますが、在宅医療を実務として行っていない方にとっては、もうひとつピンと来ないかもしれません。しかしながら、さまざまな職種が、より良い医療・介護サービスを提供するために在宅患者さんに関わっています。

どのような職種が関わっているか

まず他職種というと、医師はもちろんのこと、訪問看護師、ケアマネジャーぐらいはパッと思い浮かぶでしょう。他にはどんな職種が関わっているでしょうか。
第2回のコラム「患者さんのお宅で何をする?」にあるように、患者さんのお宅を訪問した際には、薬の配薬や服薬指導をすることだけに集中せず、患者さんがどのように日々を過ごされているのか聞いたり、お部屋全体をざっと眺めたりしましょう。会話の中やお部屋にある予定表、カレンダーなどからも、いろいろな情報が得られます。もちろんケアマネジャーから提供される介護サービス計画書にも、他職種がどのように介入するかが記載されています。具体的には、下記のような情報が得られます。

  • 医師、看護師以外にもヘルパーの方が来ている
  • デイサービスに毎日あるいは週に何回か行っている
  • ある曜日は訪問マッサージの方が来ている
  • 手すりや介護用のベッドを導入することになり、福祉用具専門相談員の方が来る
  • 夕食時には配食弁当の方が来ている
  • 定期的に入浴サービスの方が来ている
  • 主治医とは別に歯科医の往診がある

患者さんの状態や受けられている介護サービスの程度にもよりますが、患者さんの医療、介護、暮らし全般を支えるために、さまざまな職種が関わっていることが分かるはずです。

他職種がどのような仕事をしているか

患者さんに対して多様な職種が関わっていることが分かったところで、実際にその方々が、どのような目的でどのような仕事をしているかを理解しなければ、それぞれが個々の仕事を遂行するだけに終わってしまいます。また、我々薬剤師がどのようなことを訪問先のお宅や薬局であれこれと考えながら在宅医療に関わっているかを他職種に理解してもらわなければ、連携しているとは言えないでしょう。
地域によっては、在宅医療に関わるさまざまな職種が定期的に集い情報交換を行う会の開催、ケアカフェのような交流の場、地域ケア会議などがあります。また、地域包括支援センターなどでは、他職種向けに、訪問薬剤師はこんな仕事をしていますよ、というお話をする機会もあります。
薬剤師以外の職種が集う研修の場や交流の場に、薬局の中から飛び出して参加することで、お互いの仕事内容を理解し、患者さんに対する問題等について顔を合わせて話すことができます。このような機会をもつことは大変意義があることです。

情報共有の必要性

薬の服用状況や体調変化、その他暮らし全般に関わることなど、訪問時に患者さんの様子から得られたさまざまな情報について、医師やケアマネジャーに情報提供することは居宅療養管理指導を算定する上でもちろん必要です。しかし、必要に応じて、その他の職種にも報告、共有できるようにしましょう。
一番簡便でよく行われている方法としては、患者さん宅に「連絡ノート」を置き、訪問した際にそれぞれがその日の記録を残しておくことです。もちろん緊急性がある場合は電話連絡を速やかに行い、各職種と情報を共有することが必要です。
職種が違えば見るポイントも違います。記載された内容を見て、なるほど、今、患者さんはこういう状態なのか、これは薬が影響しているかもしれないな、速やかに医師に連絡しよう、対応策について他職種に連絡をとってみよう、などと考え行動することで、さまざまな問題点の改善や対応策を講じることができるでしょう。
その他、クラウドや専用アプリなど、ICTを用いた情報共有ツールを用いることで、文字情報だけでなく、例えば褥瘡の状態を画像で共有し速やかな対応や処方につなげることもできます。

地域包括ケアシステムの構築に向けて

国が推進、実現を目指しているのは、今後2025年を目処に、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築です。
この「地域包括ケアシステム」が目指す、患者さんの暮らしを第一に優先した、関わるもの皆でより良い医療・介護サービス等を提供するには、患者さんや地域の状態をよく理解すると共に、互いの仕事を理解、尊重し、専門性を生かすことが大切でしょう。

薬剤師だからできること

他職種と連携しコミュニケーションを図る上で、薬剤師だからこそできることとはなんでしょう。
薬剤師という職種は、患者さんの状態や暮らしぶりを見ながら、処方薬の効果や副作用を考察し、また一方で患者さんにどのような服薬のサポートができるかを医師や歯科医師、看護師、管理栄養士等に対して伝え、討議の内容を介護職に繋げることができる、その一方でケアマネジャーやヘルパーとは介護に関して会話ができ医療職に繋げることができる。幅広い知識と医薬品の専門性があることで、医療と介護の架け橋となれる存在です。
そう考えていくと薬剤師として在宅医療に携わる自覚や責任、楽しさも生まれてくるのではないでしょうか。

著者

井手口直子
帝京平成大学薬学部教授 博士(薬学)
専門はファーマシューティカルコミュニケーション
著書多数
ラジオNIKKEI「井手口直子のメディカルカフェ」のパーソナリティーも務める
武田和宏
株式会社 新医療総研 こぐま薬局 管理薬剤師
小児から高齢者まで幅広く地域医療で活躍する薬剤師
一般社団法人 日本在宅薬学会 エバンジェリスト

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