リクナビ薬剤師 リサーチセンター

1 かかりつけ薬剤師は、あなたの理想の薬剤師?

2016.04.25

今回の診療報酬改定において新設された「かかりつけ薬剤師」。最も大きな影響を受けるのが大規模チェーンの保険薬局であり、薬剤師自身の働き方にも大きな影響を与える改定となりました。果たして、この改定を薬剤師のみなさんはどのように捉えているのでしょうか?今まで以上に目指す薬剤師像が明確になった方、もしくは戸惑いを感じている方もいるかもしれません。

それぞれの思いが交錯する診療報酬改定。リクナビ薬剤師会員のみなさんに聞いてみました。
(2016年3月26日~4月4日実施・有効回答数n=750)

約4割が、可能なら「かかりつけ薬剤師になりたい」と回答

アンケートの結果によると、かかりつけ薬剤師に「積極的になりたい」と考えている薬剤師は全体の約1割ですが、「可能であればなりたいと思っている」を加えると約4割にのぼることがわかりました。その一方で、「なりたくない」という薬剤師も一定割合存在しました。

具体的には、「かかりつけ薬剤師として点数が付いたことは国の薬剤師に対する期待の表れであると思い、うれしく感じた」(20歳代男性・調剤薬局勤務)、「“メデイアで見た”と、何人かから既に問い合わせがあり関心の高さを感じる」(50歳代女性・調剤薬局勤務)、「かかりつけ薬剤師になってほしいと数人より打診があり、日頃の業務が評価された思い。これからも頑張ろうと思った」(40歳代女性・調剤薬局勤務)など、薬剤師への期待の大きさや、今まで取り組んできたことが評価されたことに対しての喜びの声が挙がりました。

その一方で、「今までと同じことをして患者負担だけが増えることで、せっかく今まで築いた信頼関係を崩したくないという気持ちがあります」(30歳代男性・調剤薬局勤務)、「いままでどおり相談していいのか聞かれます。子育て経験者のパートのおばちゃん薬剤師の方が投薬に関して詳しい場合も多いのに、“パートのおばちゃん先生にお願いしたい”と言われても、勤務時間の条件を満たさないため、お断りしないといけないことが実際ありました」(30歳代女性・調剤薬局勤務)など、患者さん目線になって考えた際に、制度の在り方がそもそも最良なのかを疑問に思う声も挙げられました。

最大の不安は「24時間相談に応じる体制」

算定要件として最もクリアが難しいとの意見が多かったのが、24時間相談に応じる体制を取ることの難しさです。実際には、「プライベートの時間と仕事の時間との線引きができなくなりそう」(20歳代女性・調剤薬局勤務)、「薬局単位でのかかりつけならまだしも、個人でかかえることになると、負担が大きい」(40歳代男性・調剤薬局勤務)など、個人への物理的・精神的負担の大きさに対する不安が大きいことが伺えます。

その一方で、算定要件には「ただし、やむを得ない事由により、かかりつけ薬剤師が開局時間外の問い合わせに応じることができない場合には、あらかじめ患者に対して当該薬局の別の薬剤師が開局時間外の相談等に対応する場合があることを説明するとともに、当該薬剤師の連絡先を患者に伝えることにより、別の薬剤師が対応しても差し支えない」との記載もあり、すべてを薬剤師一人が追う必要はないものの、実際開始してみないとどの程度連絡が来るのか予測がつかないところに不安を感じる薬剤師が多いようです。

また、「24時間対応できる体制になったとしても、開局時間外に処方権もない薬剤師に何ができるのかよくわからない」(30歳代女性・調剤併設型ドラッグストア勤務)、「連絡先や勤務状況等の提示など、医師にもない設定条件に不満がある」(40歳代男性・調剤薬局勤務)などの声も。かかりつけ医の制度が整わないなかでの、薬剤師のみ24時間勤務を求められることへの不満や不信感に関する声も挙げられました。

薬局はかかりつけ薬剤師の支援に前向きだが、一層のサポート体制は必要
なかでも、最も求められているのが「認定取得のための研修費用の負担」

薬局自体の売り上げに影響することもあり、かかりつけ薬剤師に関する薬局の方針は基本的にはポジティブなようです。しかし、グラフにはありませんが内訳を見てみると、薬剤師がかかりつけ薬剤師を目指そうとする際、積極的に協力してくれる薬局は約半数、残りの約半数は個人に一任されているという結果でした。

一方、薬剤師が薬局に求めるサポート体制として最もニーズが高いのが「薬剤師認定制度認証機構の認証している研修の費用を負担してほしい」、次いで「患者さんとトラブルなどが発生した際に間に入ってくれるバックアップ体制を作ってほしい」でした。

「かかりつけ薬剤師は自分の『理想の薬剤師像』と部分的に一致」が約6割
具体的な理想像は「患者さんとのコミュニケーションに優れている」薬剤師

かかりつけ薬剤師が「自分の目指す『理想の薬剤師像』とまさに一致する」と答えた薬剤師は1割にも満たなかったものの、全体の約6割は「部分的には一致する」と回答しました。

薬剤師一人ひとりが描く『理想の薬剤師像』として必要な条件は、「患者さんとのコミュニケーション能力に優れていること」が圧倒的に多い結果となり、次いで、「医師などの他業種と対等に議論ができること」、「多種多様な調剤や患者さんからの問い合わせに対して臨機応変に対応できること」と続きました。コミュニケーションや他業種とのチーム連携にまつわるスキルが上位に位置することは、“薬”を相手に仕事をするのではなく、“人”を相手にする医療従事者としての活躍を求めるかかりつけ薬剤師の思想と大きな相違はないように伺えます。

前述のとおり「部分的には一致する」と回答した薬剤師が約6割にものぼる一方で、フリーコメントを見ると、「理念は賛同するが、算定条件、運用出来るのかに疑問がある」(40歳代男性・調剤薬局勤務)、「患者さんに安心感を与え、患者さんが気を遣わずにいつでも相談できるような関係性を築けるのが本来の『かかりつけ薬剤師』だと思うので、算定要件を満たせばそのような薬剤師になれるのかもしれないが、この条件をクリアすれば必ずかかりつけ薬剤師になれるとは思えません。信頼関係を築くことは、調剤報酬で左右できないものだと思っています」(30歳代男性・調剤薬局勤務)など、求められる薬剤師像への共感はあるものの、それを診療報酬として算定することや、その薬剤師像を体現するものとしての算定条件の内容に対する納得感が少ないとの声も挙がっていました。

「患者さんにとっての『かかりつけ薬剤師』」の活躍が、患者さんの満足度につながる

ここまでのアンケート結果から、診療報酬改定に関する不安を感じる薬剤師は多いことが伺い知れましたが、そうはいうものの約8割はこの改定がプラスの効果を生むと感じています。今回の改定は、医療費の削減に限らず、患者への適正な投薬推進も目的としており、アンケートの中でも「患者さんの満足度が高まる」ことを予測する声が多く挙げられています。現に“かかりつけ”を持つことが患者の満足度につながるという調査結果もあるようです。

「かかりつけ薬剤師となることで」ではなく、「かかりつけ薬剤師として求められることを通して」見える未来の薬剤師像に向かって、個人々々が自分自身の手段で自己研鑚を続けていく。それが最終的には『患者さんにとっての「かかりつけ薬剤師」』となり、薬剤師の地位向上につながっていく。そんな薬剤師の姿が垣間見える結果となりました。

制度がどうであろうと患者さん本位でありたいと願う一方、算定クリアの要件から自分自身を守らなければならない一面や、国の医療費削減にはあらがえないことも事実。難しさはあるものの、それは薬剤師への期待の大きさであることに変わりはなく、求められるべき薬剤師が一層必要とされる世の中になっていくのではないでしょうか。

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