リクナビ薬剤師 リサーチセンター

3 徹底解剖!疑義照会時の医師とのコミュニケーション

2016.07.14

医薬分業率は年々高まっており、すでに7割を超えています。疑義照会は医薬分業のメリットのひとつであり、薬剤師にとっても重要度の高い業務です。薬剤師が介在価値を最大限発揮できるチャンスとも言えるでしょう。
それには、医師との関係づくりや会話におけるちょっとした工夫が欠かせません。薬剤師はどのように医師とのコミュニケーションを図っているのでしょうか?また、上手くいっていない場合、どのようなことが気になっているのでしょうか?
リクナビ薬剤師会員の皆さんに、ずばり本音を伺いました。

(2016年6月25日~6月30日実施・有効回答数n=658)

疑義照会の頻度は1日に1~2件程度
残薬過多や重複処方による発生頻度が高い

アンケート結果によると、現在調剤を行う職場で就業する薬剤師のうちの約4割が、2016年6月のある1週間に1~4件の疑義照会を実施したと回答しました。次いで多かったのが、週に5~9件でした。おしなべてみると、1日に1~2件程度のペースで実施されているようです。

内訳としては、残薬過多や重複処方による処方変更の発生頻度が高く、最も処方変更が少ないのは薬物動態の懸念による疑義照会でした。患者自身が残薬過多などを認識していない場合もありますが、認識していたとしても医師には言い出せずに困っているケースが多くあります。そのため、薬剤師が患者さんの本音を聞き出し、不安の解消に努めることが大きな役割を果たしているようです。

また、疑義照会を通じて加算される「薬学管理料(薬剤服用歴管理指導料)」は、そもそも、医師と連携しながら医療費の削減ひいては医療サービスの質向上に取り組んだことを評価するために設けられているもの。この度の診療報酬改定で「重複投薬・相互作用防止加算」が「重複投薬・相互作用等防止加算」へと変更になりましたが、これにより加算の適用範囲が広がりました。高まる医薬分業率のなかで、薬剤師の介在価値の発揮がますます求められていることがわかります。

医師とのコミュニケーションの自己評価は「○~△」
「処方内容に文句をつけたと受け取られないか」が最大の懸念

疑義照会における医師とのコミュニケーションの自己評価は、「まあまあうまくいっている」44.1%、「良くも悪くもない」43.9%がほぼ同率で多数派。その一方で、「あまりうまくいっていない」、「全くうまく言っていない」と回答した薬剤師は数パーセント程度に留まりました。

とはいえ、病院と薬局といった遠隔に居ながらにして、医師と良い関係性で恊働することは簡単なことではありません。どのようなコミュニケーションが行われているのでしょうか。

まずは手段ですが、グラフにはないものの、9割以上の薬剤師が電話で疑義照会を実施していることがわかりました。医師と直接顔を合わせる機会については、最も多かったのが「ほとんどない」の33.0%。次いで「たまにある」の31.9%、「よくある」18.1%、「あまりない」17.0%と続きました。「たまにある」と「あまりない」をほぼ同義とみなし合算すると約半数を占めることから、多くの薬剤師は、頻繁には医師と直接顔を合わせる機会がないといえます。

また、顔を合わせる頻度を職場別にみると、クリニックや病院で働く薬剤師が最も高く、次いで調剤薬局、調剤併設型のドラッグストアと続きました。調剤薬局内でも役割によって頻度の差はあり、クリニック近くの調剤薬局が最も医師と会う機会が多いのに対して、門前ではないその他の調剤薬局では機会が減る傾向があることがわかりました。

次に、医師との関係性という側面で気になることをお聞きしました。すると、疑義照会自体は薬剤師が介在価値を高く発揮できる業務といえるにも関わらず、問い合わせたことをネガティブに捉えられてしまうのではないかと懸念する声が最も多く挙げられました。また、「特に気にならない」とする回答が一定数存在する一方、それと同数程度の薬剤師は、医師の機嫌を損ねたり、無礼を働いたりしないよう気苦労が絶えないことがうかがえました。

特に、顔を合わせる機会の多い薬剤師ほど多く挙げていた回答が「医師の機嫌によって対応が変わってしまうのではないか」でした。たとえある程度関係性ができていたとしても、むしろできているからこそ、“他人の一時的な「機嫌」”という厄介でコントロールの利かないものを、多いに考慮する必要が出てくるのかもしれません。

リクナビ薬剤師会員が教える「医師とのコミュニケーション術」

医師とのコミュニケーションが上手な薬剤師は、どのようなことを意識して会話しているのでしょうか。リクナビ薬剤師会員の皆さんに、日々の疑義照会時のコミュニケーション術を聞いてみました。その中でも多かったご意見を紹介します。

◇シンプルイズベスト
忙しい医師に対して、要旨を簡潔・端的にまとめて伝える。
◇丁寧に伝える
敬語などの言葉遣いはもちろんのこと、
相手を敬いねぎらう気持ちを忘れず会話を行う。
◇会話の構造を意識する
話の順番や組み立てを意識しながら会話を設計。
結論から述べて、順に詳細にブレイクダウンする。
◇相手に選ばせる会話
処方変更の必要性を伝えるだけでは、責めていると受け取られる場合も。
常に代案を用意し、医師が選択できる状態を作っておく。
◇相手の数だけコミュニケーションの取り方がある
誰に対しても一辺倒に同じ話し方をするのではなく、対する医師の特徴や思考を考慮し、それに合わせたコミュニケーションをとる。
◇その他
  • 必要以上にへりくだったり感情的になったりせず、客観的な事実のみを伝える
  • 必ず処方内容に至った背景や意図を確認する
  • 断言するような言い回しはあえて避けるようにしている
  • 定期的に飲みにいく、勉強会を実施する
  • できるだけ会って話すようにする

など

「医師の立場に立って、お互いの知っていることと知らない事を明確にするように心がけています」(30歳代女性・クリニック近く調剤薬局勤務)

「医師が納得できる内容で行うことが基本。患者目線で行動する」(60歳代女性・門前薬局勤務)

「医師のキャラクターに合わせて疑義照会を行っている。電話が好きな医師、メールが好きな医師、「今」「あとで」それぞれ、医師が最も話を聞けそうなタイミングと手段を使っている」(40歳代女性・病院勤務)

「ほぼ毎日処方医と面会し、疑義照会の内容や副作用のフィードバック、新薬を使うといったことなどを話し合っている。また、こういう薬を処方したいが代わりになるような薬はどんなものがあるかといった相談も受ける。毎週、病院にて合同の勉強会を実施していることもドクターと上手くいっている一因だと思う」(30歳代男性・門前薬局勤務)

「疑義照会後、根拠となる明確な資料や情報をメーカーからいただき、再度ドクターへ必ずお伝えしています。ドクターや看護師さんからは“いつも迅速な対応をありがとう”と言っていただいているので、うまくいっているのではと思っています」(50歳代女性・門前薬局勤務)

この度の診療報酬改定では、薬剤師の役割が「物」から「人」を相手にするものへと転換しつつあることが明示されました。その中でも重複投薬・相互作用等防止加算の変更は、これまで患者目線で仕事をしてきた薬剤師にとって、より一層自身の仕事への思いを駆り立てられるものだったことと思います。疑義照会が活性化し、医師との連携も一層深まっていくことでしょう。

一方で、医薬分業が進み薬剤師の裁量が大きくなった反面、コミュニケーションが医療サービスの“要”となってきています。残薬の問題などは、飲み忘れを医師に隠したいと考えてしまう患者がいる限りなくならないでしょうし、ジェネリック医薬品の増加などにより薬の種類や名称も多様な中では、伝達ミスや認識齟齬は命取りになってしまうこともあるでしょう。これまでであれば起こりえなかった類いの問題が露見してくることもあるかもしれません。

薬のスペシャリストであると同時に、コミュニケーションや組織力に優れたジェネラリストでもあることが求められる、これからの薬剤師。薬をただ渡すだけではなく患者さんにとっての“最後の砦”として、今、薬剤師の真価が問われています。

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