緩和薬物療法認定薬剤師
緩和薬物療法認定薬剤師とは?
2007年3月、「がんの痛みや症状管理に貢献できる薬剤師を育て、痛みの緩和ケアに薬剤師も積極的にかかわろう」という目的で、日本緩和医療薬学会が設立されました。がん治療において痛みをコントロールする薬剤の担う役割は非常に大きく、専門的な技術と注意を要する医薬品の服薬指導と処方支援を行う薬剤師には専門的な知識、高いコミュニケーション能力が求められています。緩和薬物療法認定薬剤師はそうした時代の要請から生まれた資格です。現在、緩和医療は、ホスピス・緩和ケア病棟、一般病棟、在宅が主な医療現場となっていますが、ホスピス・緩和ケア病棟はまだ数が少なく、一般病棟、在宅においても充実した緩和ケアを提供するためのシステム作りが急がれている状況です。今後、一般病棟や在宅での緩和ケアの必要性が高まることが予想され、病院・診療所薬剤師のみならず保険薬局薬剤師においてもこういった資格を取得している薬剤師が増えることが望まれます。
緩和薬物療法認定薬剤師インタビュー
痛みを感じることなく人生を全うする・・・。薬剤師としてそのお手伝いができることにやりがいを感じます。
取得のきっかけ - 自分の進むべき道が見えた、がん患者さんの言葉。
大学院の実習で病院での研修を受けていたときに、ある末期がんの患者さんのケアに関わる機会がありました。その患者さんに言われて驚いたのが「がんになってよかった」という言葉。「自分の苦痛をとるためにたくさんの方が力を尽くしてくれて、人のありがたみを感じることができた。それを感じられた人生を誇りに思う」と言うのです。人はいつかは死ぬものですが、一人でも多くの方にこの患者さんのように感じてもらうために、薬剤師として何ができるんだろう・・・。そう考えたときに、緩和ケアを専門としてみたいと思ったのです。
その後勤務した病院で緩和ケアチームの一員として働くようになり、緩和薬物療法認定薬剤師の試験を受けるための条件が満たされたので、取得することにしました。
難易度 - 緩和薬物療法だけではなく、がん治療全般の知識も必要です。
試験を受けるためには緩和ケアに従事しているなどの条件がありますが、中でも大変だったのは緩和ケアの薬剤管理指導の実績について、30症例以上を提示するという条件でした。試験は緩和ケアの基本的な知識があれば問題ないと思いますが、緩和薬物療法に関することだけではなく、化学療法や放射線治療など、がん治療全般の知識も必要になります。
取得後 - 個々の患者さんに合わせた痛みの緩和を考えられるようになりました。
現在緩和ケアチームの一員として、医師や看護師、栄養管理士などそれぞれの分野の専門的なスタッフと共に病棟を回り、患者さんの痛みの状況を把握したり、適正に薬が使われているかどうかを確認したりしています。資格を取得してからは、こうしたスタッフや患者さんに対して、より自信を持って服薬指導をできるようになりました。また緩和ケアの勉強会や研修会でもこれまでは参加するだけの側だったのが、情報を発信する側としてお手伝いさせていただけるようにもなりました。
緩和ケアを担当していると、しばしば薬学部の実習生の方から「日々人の死に直面するのはつらくないのか」「経験を積むと人が死ぬことに慣れてしまうのではないか」といった質問を受けることがあります。でも私自身は、さまざまなタイプの患者さんと接することで、ひとり一人の患者さんに合った緩和の仕方に敏感になってきたと思っています。痛みというのは感じ方から表現の仕方まで患者さんによってばらばらで、生まれ育ってきた生活環境とも密接に結びついています。そこが緩和に携わるうえで、やりがいを感じるところです。資格を取るために勉強したことで、個々の患者さんに合わせた対処方法も学ぶことができました。今後は患者さんの体の痛みだけではなく、精神的な苦痛もケアできるような薬剤師になっていきたいと思っています。
この資格を目指す方へ - 今後はよりニーズが高まっていく資格です。
もちろん痛みを思うようにコントロールできないなど、うまくいかないこともありますが、患者さんのご家族から「痛みを感じずに亡くなることができてよかった」と言われることも少なくありません。病院にとっても患者さんやご家族からの信頼を得られる資格だと思います。今は国が緩和ケアを推進しているので、今後はより緩和薬物療法認定薬剤師のニーズが高まっていくと思うので、ぜひ多くの方に資格取得を目指していただきたいです。
緩和薬物療法認定薬剤師の取得方法
緩和薬物療法認定薬剤師 取得条件
試験 | 会員・勤務歴・他の認定の有無 | 研修単位 | |
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有 |
実務5年 緩和ケアへの従事3年 講習会に1回以上参加 |
講習など100単位 | |
論文 | 学会発表 | 症例 | 更新(年) |
無 | 学会発表を2回以上(少なくとも1回は発表者) | 病院30保険薬局15 | 5 |