帝京平成大学 井手口直子先生の

在宅はじめてコミュニケーション

在宅業務をはじめたばかり、これから在宅業務を行うことを考えている薬剤師のみなさん。在宅のコミュニケーションに関する悩みに、井手口直子先生が答えます。

  • 第1回

    在宅はじめてコミュニケーション
    患者さんのお宅にはじめて訪問するときの
    コミュニケーション

    2018.04.23

連載のはじめに

こんにちは!帝京平成大学薬学部の井手口直子です。薬局薬剤師の仕事として、在宅療養中の患者さんへの訪問業務は、ますます重要な仕事となっています。でも、「在宅を始めたいけれどどうしたらよいか・・・」「転職した薬局では在宅訪問も業務になっているけれど経験がない」という不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。この連載では初めての在宅業務がスムーズにいくように、在宅訪問の流れに沿って注意すべきポイントを、薬局現場で頑張っているこぐま薬局の薬剤師と一緒にコミュニケーションの視点でお伝えしていきます!

最初の心構え

薬剤師にとって在宅の患者さんと外来の患者さんの対応は、投薬する場所が薬局か患家の違いがあります。そして在宅では何といっても忘れ物があっては仕事になりません。身だしなみも含め、前もって準備しておかなくてはいけないことがたくさんあります。訪問のマナーとしては、本に書いてあるような一般的接遇マナーを身に付けると良いでしょう。

在宅訪問の流れ―前準備

身だしなみ

清潔なユニフォーム(白衣)、名札着用であることはもちろん、患者さんのお宅では立ったり座ったり、しゃがんだりかがんだりと大きな動きがあります。動きやすい服装で行きましょう(女性はスカートよりはパンツの方が良いでしょう)。また、靴を脱いでお邪魔するため靴下に目が行くものです。TPOに合ったきれいなもので訪問しましょう。女性はストッキングの場合、足にマニキュアをしていたら色も注意が必要です。

持ち物

在宅セット
  • 筆記用具
  • はさみ
  • ホッチキッス
  • セロテープ
  • マジック(黒・カラー)
  • 携帯用消毒用アルコール
  • ディスポグローブ
  • 不織布マスク
  • チャック袋大・小(残薬など回収する際にあると便利)
その他
  • 名刺;在宅用に字が大きいものを用意することをお勧めします。ない場合は、薬局の電話番号などをマジックで大きく記入すると良いでしょう。
  • 替えの靴下;猫のおしっこや患者さんが失禁しているのを知らずに踏んでしまう場合もあります。
  • スリッパ;片づけが苦手なお宅もあります。

連絡

訪問する前には必ず患者さんのお宅に連絡を入れ相手の都合を確認しましょう。ケアマネジャーや医師などから、あらかじめ患者情報、家庭環境などを得ておくと良いでしょう。とくに独居で寝たきりの方は独特な入室の仕方があったりするものです。
もし、都合が合えば初回は、ケアマネジャーや医師、訪問看護師など先にサービスを開始されている方と同行することをお勧めします。

その他

訪問当日に慌てないように、あらかじめ患者さんのお宅を地図で確認しておきましょう。車で訪問する場合は駐車場なども確認しておく必要があります(患者さんに聞いてもよいでしょう)。余裕をもって訪問しましょう。

在宅訪問の流れ―患者さんのお宅で

門前

患者さんのお宅に着いたら、コートや雨具を着ている場合は脱ぎ、一呼吸ついて、息を整えてからインターフォンを押しましょう。
例;こんにちは。〇〇薬局の●●です。
歯切れよくしっかりと笑顔で名乗りましょう。勝手に自分から入るのではなく、相手が扉を開けてくれるまで門の前で待ちましょう。

玄関

患者さん(もしくはご家族)が出てこられたら、もう一度、あいさつをしましょう。相手の促しで玄関の中に入ることができたら「失礼します」、「お邪魔します」と一言断ってから、靴を脱ぎきちんと揃えて上がります。靴は邪魔にならないよう玄関の隅に寄せましょう。

患者さんの部屋

患者さんのお部屋に入るときはノックし再度名乗り、中に入ってもよいか許可をとります。
例;「こんにちは。〇〇薬局の●●です。中に入ってもよろしいでしょうか」

そして、患者さんに改めてあいさつしましょう。
例;「■■さん、こんにちは。私は〇〇薬局の●●と申します。このたび、ケアマネジャーの▲▲さんからご紹介を受けて、■■さんのお薬の管理をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」

初めての訪問で緊張しているかもしれませんが、最初の印象はとても大切です。自然な笑顔で相手が聞き取りやすいように話すことを心掛けましょう(高齢者の場合はゆっくり、大きめの声)。相手が認知症患者や寝たきりであってもきちんと挨拶をします。
薬剤師であれば本題(薬のこと)にすぐに入りたいところではありますが、まずは相手を知ることが大切です、天気や世間話など会話のキャッチボールをして患者さんのこころを開いてもらいしょう。それから、患者さんの体調や薬で困っていること、服薬状況などの順で情報収集していくと良いでしょう。
お部屋に上がればどんな状況で薬が管理されているか一目瞭然です。「もしかしたら机の引き出しの中にも薬があるかもしれない」、「あの棚の奥にも薬がありそうだな」と思うかもしれませんが、勝手に触ってはいけません。まず、患者さんに「もしよろしければ、あの棚の奥を見せていただけませんでしょうか」と確認してからにしましょう。残薬調整のために薬をお預かりする場合も一言断り「よい」という許可を得えましょう。

お別れのあいさつ

まずはお時間をいただいたお礼を述べ、今後どのようなサービスを提供していくのか、次回の約束などを伝えましょう。
例;「今日はお時間をいただきましてありがとうごいました。今後は▼▼先生とも相談しながお薬を作らせていただきます。次回、先生の訪問が×月×日なのでお薬は十分足ります。私は先生の翌日に訪問する予定ですが、途中で何かあればいつでもご連絡ください」

患者さんの予定や都合も確認しておきましょう(デイサービス、入浴サービス訪問日等)名刺など自分の連絡先を渡しておきます。また、患者さんだけでなくご家族にもあいさつをして失礼しましょう。
滞在時間ですが、薬剤師の場合、とくに決まりはありません。20~40分を目安に、長くても1時間くらいで失礼するようにしましょう(例外もあります)。患者さんや家族も予定があります。人が家に居ると気を遣い何もできないことがありますよね。

在宅訪問の流れ―薬局に戻ったら

患者さんのお宅から戻ったら、しかるべき人(ケアマネジャー、医師等)に報告をしましょう。報告の方法は内容や時間帯によって、電話やFAX、メールなどさまざまです。最近ではSNSを利用する医療チームもあるようです。自分の都合だけでなく相手の使いやすさなども考慮しましょう。反対に患者さんやご家庭の様子で気になったことなどこちらからヘルパーやデイサービスへ確認した方が良い場合もあります。これらの報告、連絡は次の準備にもつながります。
また、次回の患者さんのお宅への訪問日がまだ先の場合は、前回伝えた服薬方法などを患者さんができているか、電話でも構わないので数日後に様子を確認した方が良いでしょう。

いかがでしたか?イメージできたらチャレンジ!
次回をお楽しみに!

著者

井手口直子
帝京平成大学薬学部教授 博士(薬学)
専門はファーマシューティカルコミュニケーション
著書多数
ラジオNIKKEI「井手口直子のメディカルカフェ」のパーソナリティーも務める
宮木智子
株式会社 新医療総研 取締役 こぐま薬局
薬剤師でゲシュタルト療法のセラピスト
地域多職種連携の在宅業務で活躍

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