子どもの頃は病弱で、よく病院のお世話になっていたんです。それがきっかけで、医療系の仕事に興味を持つようになりました。薬剤師を選んだのは、薬を飲む人の気持ちをよく理解できるので、向いていると思ったからです。幼少期は、薬を処方されると「なぜ、飲まなければいけないの?」と服用せずに捨ててしまったことも。そのような経験から、「病気の人の気持ちがわかる薬剤師になりたい」と思って、この世界に飛び込むことにしました。進学先として神戸薬科大学を選んだのは、歴史と伝統のある学校のほうが、就職時に信頼を得られそうだと考えたからです。
医療に積極的に参加したかったことから、就職では病院薬剤師の道を志望。研修時に、患者さんのベッドサイドに足を運んだり、カルテをチェックしたりしてから調剤を行う病院薬剤師の姿を見て、ますます興味を抱きました。
総合病院に入職することにしたのは、幅広い経験を積むことができそうだったからです。一般的な調剤業務のほか、病院内で使用される製剤や抗がん剤の調製業務や、医師や看護師との密な連携が必要となる救命救急業務もある。薬剤師としてスキルアップしていくうえで、最適な環境だと思ったのです。
入職してから私は調剤室に勤務。1年目は、処方箋をもとに薬の調剤を行ったり、点滴で使用する注射薬の調製を行ったりするのが主な仕事でした。2年目からは、無菌室で行う抗がん剤の調製も任されるように。現在は調剤室での業務に加えて週2回、整形外科の病棟に出て入院患者さんへの薬の説明や服薬指導も行っています。
医師と密にコミュニケーションを取り、薬についてアドバイスを行うのも重要な業務のひとつ。たとえば手術前に、別の疾患で血をサラサラにする薬を飲んでいる患者さんがいたら、服薬の中止を進言します。また、当院では定期的に市民向けの医療講座を開いており、そこで薬についての講演をすることも。多くの方に薬に関する情報提供を行うことも、私たちの大事な仕事なんですよ。
薬に関する医師への提案が採用され、その結果、患者さんのお役に立てたときが一番うれしい瞬間。薬剤師は直接病気やケガを治す仕事ではありませんが、医療に深く携われていることを強く実感することができるのです。病棟に出て入院患者さんと触れ合う機会が増えてからは、その方が元気になって退院していく様子を間近で見られるのも大きなやりがいに。退院された方が外来受診で当院を訪れた際に、私のことを覚えていてくださるなど、患者さんと深い関係が築けるのも魅力です。
また当院では、離島・僻地医療も展開。私もこれまでに1ヵ月単位で、鹿児島や山形の病院での勤務を三度ほど経験しました。他の病院での勤務を通じて、いろいろなタイプの医師や看護師と接することができ、幅広い症例に触れられる点もスキルアップに役立っています。
仕事で心掛けていることは、適当な返事は絶対にしないこと。病院薬剤師は、医師から薬のことで質問を受ける機会が少なくありません。そこで私が曖昧な回答をしてしまうと、重大なミスにつながる危険性があるのです。ですから、少しでも不安が生じたら、きちんと調べ直したりデータを確認したりしてから、回答するようにしていますね。もちろん調剤業務を行うときもそうですが、この仕事は物事を慎重に進められる方でないと務まらないでしょう。
就職先を決める際は、自分がどのような薬剤師になりたいかを考えることが重要。私は、幅広いスキルを持つ薬剤師になりたいと思ったので、就職先として総合病院を選びました。薬剤師としての理想の将来像を思い描き、病院見学に行くなど足を使ってしっかり情報収集を行えば、働き始めてから「こんなはずじゃなかったのに…」と後悔することはないと思います。
北野さんのある一日
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- 08:00
- 出勤
- カルテなどを参考に、入院患者さんの情報確認を行う。
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- 09:00
- 薬の説明や服薬指導
- 入院患者さんのもとを訪れ、薬の説明や服薬指導。気になる点があれば逐一、医師に報告する。
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- 12:00
- ランチ休憩
- 休憩は40分。その日に訪れる入院患者さんの数や、急患の有無によって時間はまちまち。
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- 12:40
- 薬の説明や服薬指導
- 午前中と同じように、入院患者さんのもとを訪問。多い日は1日に20人ほどの患者さんと接する。
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- 14:00
- 事務作業
- 服薬している薬が患者さんの体質に合っているかどうかや、その後の回復状況などを記録。
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- 17:00
- お仕事終了
- 日勤のほか、16:30~翌朝9:00まで勤務する夜勤も月2~3回ある。