リクナビ薬剤師 リサーチセンター

5 今、薬剤師が注目する新薬とは!?

2016.11.25

いまやテクノロジーの進歩により、高い技術力を駆使して新しい薬剤が次々と生まれています。従来のような医療関連産業のみならず、それ以外の分野からも多くの企業が参入し、製薬企業との新たな試みも起こり始めています。その結果、「数年前までは救えなかった命を、今は救うことができる」という、薬と患者さんをつなぐ薬剤師にとって非常に感慨深い瞬間も増えてきているのではないでしょうか。

そんな薬剤師がいま注目する新薬とは、どんな薬剤なのでしょうか?また、それについてどのような期待や懸念を抱いているのでしょうか?リクナビ薬剤師会員に聞いてみました。

(2016年11月2日~11月6日実施・有効回答数n=866)

Q:最近発売された新薬のうちもっとも関心の高い製品を選び、その理由についてお答えください。

※選択肢は、直近一年以内に販売されたものを中心に、売上や対象患者数が大きいと想定されるものを選定

問題用グラフ

第1位オプジーボ(がん免疫薬)185票

人間が本来持つ免疫力を利用し、がんを退治する期待の新薬。
一方で、高額さから2018年の薬価改定を待たずして価格引き下げが検討されている。

  1. 理由1)想像以上の薬価の高さ
  2. 理由2)画期的で新しい作用機序だから
  3. 理由3)メディアで報道されるなど話題性の高さ
  • がん免疫療法という新しいがんへのアプローチを示していることもさることながら、またその薬価がこんなにも注目されているのは珍しいことではないかと思います。使用限界がなく、次々と適応が増え、医療費の高騰に困窮している日本で一番問題視されている医薬品ではないかと思います。もちろん、安易に薬価を下げれば解決する話ではありませんが。以上のことより、オプジーボが日本の今後の医療体制、あるいは保険の形を変えていく可能性があると思います(20歳代女性・企業勤務)
  • これまでにない画期的な作用機序をもつ薬であり、これまで治療薬がなかった患者で効果がみられているため(40歳代女性・一般病院勤務)
  • 夢の薬であることが放送されている傍で、高額であること、効果が微妙であること、いろいろ考えさせられます(50歳代女性・一般病院勤務)

第2位ハーボニー(C型肝炎治療薬)136票

C型肝炎は飲み薬だけで治る時代に!?
治験結果により、100%に近い著効率を達成した薬剤。

  1. 理由1)高い治癒力への期待
  2. 理由2)薬価の高さ
  3. 理由3)副作用が少ないから
  • 治癒率100%を実感できます。12週間飲み切った患者様にヒアリングすると全ての患者様が治癒できています。しかも、開始前の患者様の不安だったお顔とは比にならないくらい笑顔いっぱいのお顔にさせるハーボニーはすごいと思います(40歳代男性・クリニック近く調剤薬局勤務)
  • 高額薬価のため、医療財政に影響あるクスリのひとつであり、実際処方されているので、適正使用の面からも興味があります(40歳代女性・門前薬局勤務)
  • 今までのインターフェロンとリバビリンの併用療法では、インターフェロンによる鬱症状や間質性肺炎などの副作用でドロップする症例があった。ハーボニーはインターフェロンフリーかつ副作用が軽微である。画期的な治療と感じた(30歳代男性・一般病院勤務)

第3位ロコアテープ(鎮痛消炎剤)118票

外用薬だが、内服薬と同等の優れた効果をもたらすと言われている湿布薬。
立ち仕事の薬剤師には身近な存在!?

  1. 理由1)内服薬同等の優れた効果への期待
  2. 理由2)自分自身で使ったことがあり、良い効果を実感
  3. 理由3)枚数制限や内服薬との禁忌など、コンプライアンスに注意が必要
  • 外用薬で内服薬と同等の血中濃度まで上昇させることの出来る製剤に興味がある(30歳代女性・門前薬局勤務)
  • 処方量が多く、外用剤でありながら投与枚数の制限や相互作用など特徴があるため(20歳代男性・調剤併設型ドラッグストア勤務)
  • 内服薬との相互作用を考えなければならないのが使いにくいんじゃないかと。患者さんに説明し、理解していただくのが難しいかも(40歳代女性・門前薬局勤務)

第4位ボノサップ・ボノピオン(ヘリコバクター・ピロリに対する一次・二次除菌療法)59票

胃炎や胃潰瘍の原因となるピロリ菌除去に用いられる薬剤。

  1. 理由1)既存の除菌薬に比べた除菌効果の大きさへの期待
  2. 理由2)今後処方数の増加が予想されるため
  3. 理由3)日本人に多い胃がん発祥のリスク低減につながる点
  • タケキャブの酸分泌抑制効果がPPIよりもより効果的であると、実際の患者さんの治療効果でもみられる分、ピロリ除菌についても従来品よりも除菌効果が上がると期待が持てるため(20歳代女性・門前薬局勤務)
  • 広く需要が見込まれるため(50歳代男性・調剤を扱わないドラッグストア勤務)
  • 日本人に多い胃がんの発症リスクの低減につながることにより、がんの発症が抑えられれば、日本人の健康に寄与し尚且つ医療費の削減につながる(60歳代男性・ドラッグストアの薬相談室勤務)

第5位ルコナック(爪白癬治療剤)57票

皮膚の水虫と違って、治りにくいと言われている爪白癬(爪水虫)の治療薬。
従来の内服薬タイプのものに加え、外用剤のひとつの選択肢として加わる。

  1. 理由1)既存の爪白癬治療剤と比べた効果の大きさへの期待
  2. 理由2)直接爪に塗るだけという手軽さによるコンプライアンス向上への期待
  3. 理由3)内服薬に比べた副作用の少なさ
  • 従来品と比較し高濃度であり、治りにくい爪水虫に内服を併用せず治療できる点(50歳代女性・門前薬局勤務)
  • 爪白癬に罹っている高齢者から相談されても、内服では定期的な血液検査が必要なためおすすめできませんでしたが、塗るだけで良いことは患者様に勧めやすく、とても良い剤形だと思います(50歳代女性・離職中)
  • 内用薬より副作用が少なく使いやすいと思われるから(50歳代女性・その他の調剤薬局勤務)

第6位ニュープロパッチ(パーキンソン病治療剤)41票

パーキンソン病患者に対し処方される、脳内神経伝達物質のドーパミンを刺激する作用を持つパッチタイプの貼付剤。

  1. 理由1)パッチタイプの薬剤の有効性への期待
  2. 理由2)1日中一定の血中濃度を維持できる点への期待
  3. 理由3)パーキンソン病の新薬は久しぶりだから
  • 多剤服用になりがちなパーキンソン治療ですが、パッチ剤なら服薬での負担が減り、併用効果にも期待できる(50歳代女性・門前薬局勤務)
  • パーキンソン病治療薬で初めて貼付剤が発売されたのでこれからの需要が気になる(30歳代女性・クリニック近く調剤薬局勤務)
  • 1日中一定の血中濃度を維持できる点がすばらしいと思います。これまでのパーキンソン病治療薬では、夜間から早朝にかけて薬の効果が切れてしまうことがあったので、ニュープロパッチは持続的に薬効を発揮できる点がいいと思います(20歳代男性・一般病院勤務)

第6位シクレスト(統合失調症治療薬)41票

舌下錠であり有効性・安全性が高く、統合失調症薬物治療の新たな選択肢となることが期待される薬剤。

  1. 理由1)舌下錠である点
  2. 理由2)コンプライアンス向上に服薬指導が重要であるから
  3. 理由3)糖尿病禁忌でないから
  • 舌下錠であり、今までの抗精神病薬ではない剤形で効果発現が早そうで関心があります(20歳代女性・門前薬局勤務)
  • 抗精神病薬初の舌下錠であり、服薬コンプライアンスに期待ができる反面、適切な服薬指導が必要となるため(30歳代男性・一般病院勤務)
  • 副作用に血糖値の変化が少ない。糖尿病禁忌でない点(50歳代女性・クリニック近く調剤薬局)

第8位インスリングラルギンBS注(糖尿病治療薬)39票

日本において初めてバイオシミラー製品として承認されたインスリン製剤。
インスリンの補充によって、持続的な血糖コントロールを可能に。

  1. 理由1)バイオシミラー製品の普及への期待
  2. 理由2)値段が先行薬よりも安く、患者負担が軽減されるため
  3. 理由3)自分自身や身内がインスリンを打っているため
  • 最近出てき始めたバイオ系製剤の後発品が、今後有効性や副作用の問題もなく使用していけるのか、興味があるから(40歳代女性・企業勤務)
  • ランタスのバイオ後続品のインスリングラルギンは、治療費が安くなる。ほぼ入院患者の6割がインスリンを使用しているので、患者さんにも病院側もメリットが高い。また、試した結果、患者さんの血糖コントロールの効果はランタスと同じであり、使い方もほぼ同じ、切り替えても患者さんに不便とは言えないと思う(30歳代女性・一般病院勤務)

第9位マリゼブ(2型糖尿病)38票

DPP4阻害薬に属する糖尿病の治療薬。
インスリンを過剰に分泌させず、安全性に優れる。

  1. 理由1)週1回のみの服用薬の有効性への期待
  2. 理由2)服薬回数の少なさからコンプライアンス向上に寄与できそうだから
  3. 理由3)自分自身や身内が使用しているため
  • 透析にも使える週1回製剤ということで、12月の長期処方開始のタイミングでどう伸びるのか、注目している(30歳代女性・企業勤務)
  • DPP4単剤でコントロールできている患者様が週1服用で済むようになる。薬を飲むという行為にストレスを感じている患者様もいるので、コンプライアンス向上に寄与できる製剤ではないかと思い選びました(40歳代男性・門前薬局勤務)
  • 家族に糖尿病の者がいるので(40歳代女性・離職中)

第10位レパーサ皮下注(高コレステロール血症治療薬)29票

PCSK9阻害薬と呼ばれる新しい機序の薬剤。
高コレステロール血症の患者に対して、2週間または4週間に1回の皮下投与。

  1. 理由1)コレステロール薬で初めての注射薬だから
  2. 理由2)今までにない作用機序への期待
  3. 理由3)コレステロールの過度の低下に問題が起きないかへの懸念
  • これまで高コレステロール血症の薬は内服しかなかったと思いますが、この領域で注射薬というのは新しいと感じたので(30歳代女性・企業勤務)
  • 家族性高コレステロールにも効果が期待できそうな点と、今までにない作用機序である点。経口薬がでればなおいいのだが(20歳代男性・門前薬局勤務)
  • 生活習慣病である高コレステロール血症で糖尿病では注射製剤があったが、今までにないものなので。血糖を速やかに下げる必要はあると思うが、コレステロールは皮下注射にしてまで下げる必要があるのか?動脈硬化との関係も気になるところです(30歳代女性・門前薬局勤務)

以上の薬剤を見ると、日本人に多いがんや糖尿病、高脂血症などに関する薬剤を中心に、高齢化社会において需要が増加するであろう薬剤が上位に多く挙げられています。また、薬剤師の働く職場別に見てみたところ、がん免疫薬は圧倒的に企業や病院で働く薬剤師に、一方、除菌薬や爪白癬治療剤はクリニックまたはクリニック近くの調剤薬局、パーキンソン病や糖尿病薬は調剤を扱わないドラッグストアで働く薬剤師から高く注目されていることがわかりました。患者としての薬剤師にとって比較的身近な薬剤も多く、それらは実際に自分自身が使っているケースも多々。そのため関心が高く寄せられていることがわかりました。

そのなかでも最も関心の高い薬剤として挙げられた「オプジーボ」は、その革新性から“夢の新薬”とも呼ばれる一方、国の財政を圧迫しかねない高額薬としてメディアなどでも話題となっている薬剤です。

今はがんであっても、仕事や日常生活を送りながら治療を行うことができる時代。定年年齢の引き上げなど、働きながら病気と闘う患者は今後一層増えていくことでしょう。働くことは患者の生きがいになると言えますが、やはり金銭的工面の面が大きいことが否めません。「オプジーボ」の場合、患者1人で年間約3500万円かかるとまで言われています。厚生労働省は2年に一度の薬価改定を待たずして特例で引き下げを検討しており、とうとう2017年2月から50%引き下げることの承認が下りたようです。

病に苦しむ患者にとって、新薬は一筋の光。期待が大きいからこそ、薬と患者をつなぐ薬剤師の役割の大きさは計り知れません。新薬の研究開発はもとより、治験の円滑な進行サポート、適切な調剤・服薬指導などが重要になってきます。あなたの薬剤に対する関心やその一声が、患者の未来を変えるかもしれません。

これからも次々と登場する新薬から目が離せませんね。

参考資料 11位以下の関心の高い製品
  • 第11位:ボンビバ錠(骨粗鬆症治療薬) 25票
  • 第12位:プラルエント皮下注(高コレステロール血症治療剤) 23票
  • 第13位:フィコンパ(抗てんかん薬) 19票
  • 第14位:ベルソムラ(睡眠薬) 12票
  • 第15位:タグリッソ(非小細胞肺がん治療薬) 8票
  • 第16位:ビムパット(抗てんかん剤) 5票
  • 第16位:コパキソン皮下注(多発性硬化症治療剤) 5票
  • 第18位:ゲンボイヤ(抗HIV薬) 4票

その他には、ビラノア(アレルギー性疾患治療剤)、トルリシティ(2型糖尿病)などがあげられていました。

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