平成28年度11月
平成28年9月17日(土)〜19日(月)に開催された「第26回日本医療薬学会年会」において研究発表の報告を行いました
リクナビ薬剤師では、東京大学大学院薬学系研究所と、薬剤師の転職時・復職時・新入社員時に、どの様な不安が惹起し、転職に影響するかなどに関する共同研究を行っている。2016年2月、「薬剤師のキャリアや転職に対する不安要因に関するアンケート調査」を、リクナビ薬剤師の登録会員を対象にwebアンケート調査を行ったが、さらに詳細な解析をすべくフォーカスグループインタビューを行った。なお、本研究は、東大・薬学部「ヒトを対象とする研究倫理審査委員会」の承認を得て実施し、平成28年9月17日(土)〜19日(月)に開催された「第26回日本医療薬学会年会」において研究発表の報告を行った。調査結果は、以下の通りである。
演題名
フォーカスグループインタビューを用いた薬剤師のキャリアや転職に関する不安要因の解析
発表者
○三木晶子1、十河美香2、小林直樹2、佐藤宏樹1、澤田康文1
1東大院薬 2株)リクルートメディカルキャリア
目的
薬剤師の転職時・復職時の不安や転職要因などを解明し、その対策を講じる必要がある。我々は先に薬剤師の不安要因の実態調査を行った。その結果、前職での「将来性に不安」、「自分の評価が不満」などは転職してもあまり解決されず、勤務条件的不満は比較的解消されている傾向にあることが明らかとなった(第19回医薬品情報学会総会・学術大会発表)。本研究では、アンケート調査では得られない転職に関する深層心理を詳細に聞き取り調査するためにフォーカスグループインタビュー(以下FGI)を行った。
方法
リクナビ薬剤師に登録中の20~50代の転職経験のある現在就業中(調剤薬局)の薬剤師を対象とし(男性7名、女性15名)、平成28年2月16日(4名)、17日(3名)、28日(各5名×3グループ)に全5回のFGIを行った。本インタビューは、(1)転職先選択のポイント(2)仕事のやりがい(3)薬剤師としてのキャリアアップ、スキルアップ(4)転職・復職時の不安などを主な質問項目とする半構造化インタビューとした。音声データは逐語化しテキストマイニングを行った。なお、本研究は本学薬学部倫理委員会の承認を得て行った。
結果
参加者に女性が多い事も影響し、「安定した家庭生活を最優先する」就労形態が転職の際の重要なポイントであることが示唆されたが、男女関係無く転職先選択のポイントとして「高収入」、「休日の取得しやすさ」、「定時就業」などの需要アイテムが挙げられた。また調剤薬局勤務では明確なキャリアアップを思い描けない現状が示された。転職時の不安要因としては、個々のスキルおよび人間関係が挙げられたが、中途採用時の研修制度が充実していない場合が多いことも示された。
考察
前述の先行調査と同様に、薬剤師にはキャリアプランが見えづらい傾向にあり、その結果、勤務条件面をかなえることが転職の主目的となる傾向が見られた。