皆さんは薬剤師の転職市場にどのようなイメージをお持ちでしょうか?診療報酬改定や景気などの影響を受け、その時々で転職市場の動向は変化しています。
よりご納得いただける転職活動を行っていただくために、厚生労働省が示している有効求人倍率やリクナビ薬剤師の企業担当者のインタビューを参考に、現在の薬剤師の転職市場動向をまとめました。ぜひチェックしてみてください。
1.薬剤師の有効求人倍率の傾向は?
転職市場の状況を理解するための参考指標の一つに有効求人倍率があります。有効求人倍率とは、ハローワークに申し込みのあった「月間有効求人数」を、ハローワークで求職している「月間有効求職者数」で割った、求職者1人当たりの求人数を指します。
以下の表が、2015年以降の有効求人倍率の推移です。
2021年の正社員(パート除く常用)の「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」の有効求人倍率は2.68倍と、全職種の1.06倍と比較すると高い傾向にありますが、2015年と比較すると7.18倍→2.68倍と変化しており、1人当たりの求人数が約5件減少しています。
また、パート(常用的パート)の「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」についても同様で、2021年の有効求人倍率1.25倍は、全職種の0.97倍と比較すると高いですが、2015年からは5.13倍→1.25倍と変化し、1人当たりの求人数が約4件減少しています。
かつては深刻な人手不足だったのが、徐々に緩和している状態だと言えます。
【有効求人倍率推移(パート除く常用)】
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
医師、歯科医師 獣医師、薬剤師 |
7.18倍 | 7.09倍 | 6.73倍 | 5.89倍 | 4.93倍 | 3.36倍 | 2.68倍 |
全職種 | 0.98倍 | 1.11倍 | 1.27倍 | 1.41倍 | 1.42倍 | 1.07倍 | 1.06倍 |
【有効求人倍率推移(常用的パート)】
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
医師、歯科医師 獣医師、薬剤師 |
5.13倍 | 4.91倍 | 4.52倍 | 3.69倍 | 2.78倍 | 1.73倍 | 1.25倍 |
全職種 | 1.29倍 | 1.43倍 | 1.5倍 | 1.54倍 | 1.5倍 | 1.11倍 | 0.97倍 |
- 出典:厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)「職業別労働市場関係指標(実数)(平成23年改定)(平成24年3月~)」を参照して作成
- https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450222&tstat=000001020327
また、2020年に厚生労働省が実施した「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」では、67.9%の薬局で「適切な人数を確保できている」「適切な人数よりやや多く在籍している」と回答し、「適切な人数より不足している」と回答したのは19.4%だったことからも、深刻な人手不足は緩和しつつあると言えます。
薬剤師人員数の充足状況については、「適切な人数を確保できている」が最も多く(60.5%)、「適切な人数より不足している」が19.4%であった。
- 【薬局人員・勤務体制(人員の充足状況)】(n=1,472)
- 出典:厚生労働省 令和3年3月 「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」p.11を転載
- https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000788085.pdf
2.実際の転職市場はどうなのか?
リクナビ薬剤師の企業担当アドバイザーに聞いてみた!
実際に薬剤師の転職支援に携わってきた企業担当アドバイザーにインタビューをしてみました。
ぜひ現場の生の声を参考にしてみてください。
- 関西エリア担当
企業担当アドバイザー 関西エリアは都市部が多いため、有効求人倍率は下がっていて、内定獲得の難易度が上がっているのを感じます。在宅の需要の高まりがあるため、企業からは、在宅の経験、または、今後在宅をやっていきたいというモチベーションのある方、対人コミュニケーション能力を持っている方が必要とされています。
数年前までは、薬剤師資格を持っていれば転職には困らない状況でしたが、今では対人コミュニケーションが重視されているため、前述の在宅に加え、かかりつけ薬剤師の経験や、認定薬剤師の資格を持っていることが求められることも多くなっています。
- ローカルエリア担当
企業担当アドバイザー ローカルエリアは、政令指定都市とそうでない地域で有効求人倍率に差があり、政令指定都市ではない地域の方が求人倍率も高く、年収が50万円以上高く提示される場合もあります。関東エリアや関西エリアと比較すると、ローカルエリアは全体的に求人があり、採用要件の引き上げは緩やかで、調剤未経験者の転職も叶いやすいです。
ラウンダーや管理薬剤師、僻地の薬局などの特徴を有する求人では、一般の勤務薬剤師よりも年収が高めに提示されるため、転職活動において高年収を得ることを軸に検討される方はローカルエリアでの転職も視野に入れて求人を確認いただくことを推奨しています。
薬剤師の転職市場においては、エリアによる違いや特徴が見受けられます。有効求人倍率や内定獲得の難易度もその時々、エリアによって傾向があります。
最新の転職市場の動向や、エリアの特徴についてはもちろん、「転職したいけど、どのような経験をアピールすればよいか分からない…」等不安なことがございましたら、ぜひリクナビ薬剤師にご相談ください。
企業担当アドバイザー
関東エリアは他のエリアと比較して有効求人倍率が低いです。求職中の薬剤師数が多く、企業の採用基準が年々上がっています。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、新規出店の中止、処方箋枚数の減少などで中途採用のニーズが減少しました。
一方で、北関東や、千葉県の房総エリア、神奈川県の山梨寄りのエリアではまだまだ採用ニーズがあり、積極的な採用活動が行われています。
関東エリアの採用要件の特徴としては、調剤経験があることはもちろんですが、地域医療を推進できるコミュニケーション能力があるか、在宅医療への積極性はあるか等、国の方針にマッチする薬剤師を求める傾向です。