薬剤師国家試験の傾向と対策

薬剤師国家試験 最新傾向

薬剤師国家試験は大学6年間の集大成ですので、出題範囲は膨大です。
ここでは過去の国家試験問題を分析し、最近の傾向も踏まえてポイントをお伝えします。

【1】国家試験は難しくなっているの?

国家試験の難易度は、近年難化傾向です。
6年制国家試験が始まった当初(2012年第97回)から比較すると、正答率が低下傾向にあり、明らかに難しくなっています。
そして、この難しさはしばらく続くと予想されます。

上記のように、必須の正答率が高くなっていますので、必須でしっかりと得点をとるようにしましょう。

「取れる所で確実に取る」、これが合否をわけていきます。

【2】最近のキーワードは「考える事のできる薬剤師を創る」

「考える事のできる薬剤師を創る」という命題が6年制教育においてあります。

そのため、CBT試験の時は暗記で合格を得ることができましたが、国家試験では暗記だけでなく、グラフを読み解くチカラや与えられた条件から導き出すような、考えさせられる問題が近年出題されるようになりました。暗記に頼った勉強法だけでは合格を勝ち取れなくなっています。

必須問題編

物理・化学・生物においては高校時代の基礎を問うような問題も出題されています。

<過去問題例>必須問題 化学編

第100回 問6

正答率:57.9%

1828年に、ウェーラー(Wöhler)によって無機化合物(シアン酸アンモニウム:NH4OCN)から初めて合成された有機化合物はどれか。1つ選べ。
問題画像
解答

第100回 問9

正答率:31.6%

不対電子を1つもつのはどれか。1つ選べ。
  1. ①NO+
  2. ②NO
  3. ③N2O
  4. ④NO3-
  5. ⑤HNO3
解答

問6の、1828年にウェーラーが発見した、無機化合物から初めて合成された有機化合物は尿素です。大学時代にはさらっと流すだけで、高校時代にしっかりと勉強したはずの内容です。

問9は、高校時代に化学を専攻していれば知っていたが、大学時代ではわざわざやらない内容でした。

これらのように、基礎の基礎をしっかりと覚えておくことも必要です。

実務問題編

問題の文章をきちんと読解しているか、理論的に考えているか?が問われます

<過去問題例>実務問題 衛生編

第100回 問232-233 複合問題(連問)

41歳男性。山歩きの時に採取したきのこや山菜を、おひたしにしてその日の夕食で食べたところ、1時間後に口唇のしびれが出現した。症状が次第に悪化し、激しい嘔吐、四肢のしびれ、呼吸困難を起こしたため、緊急搬送された。病院到着時に重奥菜心室性不整脈が出現したため、アミオダロン塩酸塩注射液が投与された。

第100回 問233

正答率:40.3%

(衛生)植物とその有毒成分の組合せのうち、本症状の原因として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。
  1. 植物 - 有毒成分
  2. ①ツキヨタケ - イルジンS
  3. ②タマゴテングタケ - α-アマニチン
  4. ③ジギタリス - ジギトキシン
  5. ④ワラビ - プタキロシド
  6. ⑤トリカブト - アコニチン

トリカブトは、キンポウゲ科の多年草でトリカブト属に属し、世界に約300種類、日本では約70種類が存在する。山菜の同じキンポウゲ科のニリンソウに類似しており、おひたしなどで誤食した中毒事故が散発する。口唇や舌のしびれに始まり、次第に四肢(手足)のしびれ、嘔吐、腹痛、下痢、不整脈、血圧低下などを起こし、痙攣、呼吸不全(呼吸中枢麻痺)に至って死亡することもある。

解答
解答率
①(13.7%)
②(12.6%)
③(23.6%)
④(9.6%)
⑤(40.3%)

例えば、問233ですが、しびれの症状が出ています。これは神経障害です。しかし、4行目に心室生期外収縮という記述があり、“心室生期外収縮=ジギタリス”という知識だけで回答を出すと不正解になってしまいます。

神経障害の所見をしっかりと読み取り、理論的に考えて神経毒を選択しなければなりません。文章を読解することなくキーワードに飛びついてしまうとケアレスミスを招きます。

計算問題編

グラフや問題文の中にある必要な情報をどれだけ読み取るか、がカギになります

<過去問題例>計算問題 編

第100回 問125

正答率:51.0%

図は我が国の平均寿命の年次推移を示したものである。1947年から1960年にかけての平均寿命の著しい延伸の主な原因はどれか。2つ選べ。
問題画像
  1. ①0~4歳の感染性疾患による死亡率の低下
  2. ②10歳代の不慮の事故による死亡率の低下
  3. ③20歳代の結核による死亡率の低下
  4. ④40歳代の脳血管疾患による死亡率の低下
  5. ⑤50歳代の胃がんによる死亡率の低下

明治から第二次世界大戦直後の1950年までの時代は、結核や肺炎などの細菌感染による疾患が上位を占めていた。しかし、その後の医療の発展や抗生物質などの優れた医薬品の開発(例:1944~1961年に抗結核薬の開発)、さらには公衆衛生の改善などによって感染症による死亡数は急激に減少した。

解答
①・③
解答率
①(67.9%)
②(5.7%)
③(69.4%)
④(26.1%)
⑤(28.1%)

死亡率の問題ですが、今までも死亡率の計算式や死亡率の定義を問う問題が出題されていました。今回は死亡率の計算式がわかっていることはもちろんですが、計算に必要な数値をグラフから読み取る必要があります。衛生だけでなく、必要な情報が問題文に記載されており、それを用いて回答を出す形式が全体的に増えています。

【3】過去問は大切なメッセージ

国家試験の過去問題は出題委員からの大切なメッセージです。
「こういうことを知っておいてほしい」、「これを理解できるようになってほしい」という、思いと勉強指針が込められているのです。
過去問題を元に、関連問題などそこから拡げて周辺知識を身につけるようにしていきましょう。

【4】トピックス問題はニュースをチェック

世間で注目されている新薬や病気、公衆衛生的な事柄が出題されます。
特に夏休み前までの医療のニュースはチェックしましょう。
今騒がれている、MERSも感染経路など、要チェック!

【5】計算問題は苦手意識の克服を

最近、出題数が増えてきたのが計算問題です。
この計算問題は注意が必要で、一生懸命解いていくうちに、結構な時間が経っていたりします。計算問題に時間をかけすぎて、全ての問題をみる時間がなくなった~(泣)という嘆きを受験生からよく聞くようになりました。

計算問題はぜひ、最後に余った時間をすべて使い、落ち着いて解くようにしてください。
そして、何より、計算問題は「苦手意識を持たない」ことが重要です。
しかも直前期には覚えることがたくさんありますから、計算問題は夏休み中にやりましょう!

一番良い方法は、とにかく問題を解く事。
同じ問題でもよいです。
毎日1問だけでもよいので、何度も何度も解いて、計算問題の苦手意識を克服しましょう。

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