がん患者が増えている中、「第5のがん治療」として注目されているのがBNCTです。国立がんセンターを中心として研究が進んでいます。実は薬のプロである薬剤師が将来的に関わる可能性があるものです。今回はBNCTについて紹介したいと思います。

そもそもがん治療の違いって?

現時点での日本において、主ながん治療として、「外科的治療」「化学的治療(抗がん剤治療)」「放射線治療」「免疫治療」の4つがあります。この4つは実際に臨床の現場でも使われているものです。

超高齢社会の突入により、がん患者が増加している中で、国も力を入れており、近年になってがん治療の研究は加速している状況です。ただ、どの治療法も効果が認められている反面、副作用の問題が付いて回ることは周知のことと思います。これはがん治療だけでなく、どの医療も一長一短があるので当たり前のことです。今回紹介する「BNCT」はこれまでの治療法よりもさらに副作用が少ないと考えられています。

BNCTの特徴は?

BNCTは「Boron Neutron Capture Therapy」の略になり、日本語名にすると、「ホウ素中性子捕捉療法」と呼ばれるものです。

BNCTでは、まず10B(ボロン・テン)と呼ばれる物質を標識したホウ素薬剤BPA(p-boronophenylalanine)を注射によって患者の体内へ導入します。この際に、ホウ素薬剤はがん細胞だけに選択的に取り込まれるという特徴があります。
その後、弱い中性子線を照射すると、がん細胞内の10Bとぶつかることで核分裂を起し、アルファ粒子とリチウム核を生じます。このアルファ粒子やリチウム核は大きな破壊力をもったものですが、およそ10μmの近場までしか飛ばないという特徴を持ちます。そのため、およそ20μmの大きさのがん細胞外へでることがほぼなく、結果的にがん細胞だけを強力に破壊します。

がん組織を見てみると、がん細胞だけが単一で塊になっている訳でなく、実は正常細胞とがん細胞とが複雑に入り乱れて存在しているという状態になっています。これが治療を難しくする一因となっています。がん細胞だけを殺そうとしても、何らかのメカニズムで周辺の正常細胞にも影響を与えてしまう、また、正常細胞がバリアとなり、がん細胞への攻撃を妨げてしまうということが起こりえます。こういった正常細胞への影響を回避できるのがBNCTとなります。

問題点も改善されつつある?!

BNCTにも問題点はもちろん存在してきました。

一番の問題点は、中性子発生源として原子炉を用いなければならず、かなり大掛かりな施設、また、事故防止への厳重な管理などが必要であったため、容易に導入することはできませんでした。
しかし、近年、直線加速器を利用したシステムを使用することで、より小型でより安全性が高い環境下でBNCTが行えるようになったため、今後の臨床化が加速していくだろうといえます。

薬剤師が関わることになると考えられる?!

BNCTに用いる薬剤はもちろんれっきとした医薬品です。ということは、薬のプロである薬剤師であれば、その薬剤についての知識や治療メカニズムについて知っている必要があります。

そのためには、BNCTの根本にある放射線に関する勉強が、これまで以上に必要となるということです。今後臨床現場に出てくることはほぼ確実ですので、今のうちからきちんと準備しておくと、今後の薬剤師過剰時代にも生き残っていける薬剤師になれるのではないでしょうか。

そして将来的に、この治療を受ける患者さんが薬局に来た際にきちんと寄り添える薬剤師にもなれると思います。ぜひご自身でも少しずつ勉強してみてください。

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